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キスしか T ページ44

ずっと泣いてばっかりだな、Aさん。

オレはAの唇にそっと口づけた。

優しく啄み、甘く食んで、Aの柔らかな下唇を吸い上げた。

Aはされるがままだった。

拒まれないことにほっとする。

こんな時なのに、Aに触れられる幸せにどうしようもなく胸が震えた。

今死んでもいいとさえ思う程に。

オレは何度もAの唇にキスをした。

触れるだけのキスでもあっという間に熱くなっていく身体。

もっと、もっと...

さっきよりも強く、深く唇を食みながら、徐々に舌をAの口内へ差し入れる。

Aの舌に自分の舌を擦り付ければ、やがてAの舌も絡みつくようにオレを求め出す。

嬉しかった。

素直に受け入れてくれるAに、どんどん深く、激しくなっていくキス。

「A...」

やがて静かな部屋に響き渡る艶かしい水音と吐息。

角度を変え、Aの後頭部を片手で押さえながら、オレはAの口内を貪るように味わった。

「A、A」

オレはうわ言のようにAの名を呼びながら、口付けを繰り返す。

夢みたいだ。

またAに触れられるなんて。

Aとキス、してるなんて。

Aの目からは涙がとめどなく溢れていた。

オレはそれを指先で拭い、唇で吸い、Aの細い身体を抱きしめた。

「A...」

今ここでどんな言葉を使ってAと離れていた年月を埋めようとしても、陳腐で白々しくなるだけの気がして、オレはただ愛おしい名を呼び続けることしか出来なかった。

「A」

呼ぶ度にAへの愛おしさが込み上げる。

もう二度と離れたくない。

このまま1つになって消えてしまいたい。

絶対に守るから。守ってみせるから。

ずっとずっと好きだった。

愛していた。

抱きたくて、でも抱けなくて、でもそれでも傍で一緒に抱き合って眠れるだけで幸せだった日々。

愛していたんだ、ずっと。

「裕太、泣かないで?」

オレよりも泣いているくせに、Aがオレの涙を拭って微笑む。

「裕太を不幸にしたくなかったのに。なのにこんな...」

「オレを幸せにしたかったら、オレの腕の中にずっといてよ。オレから離れないでよ。オレを──」

最後まで言葉にならなかった。

あの時みたいに去って行かないで。

子供にオレの名前を付けるなんて言って消えないで。

オレを愛して...。

オレ達は強く抱きしめ合いながら、互いの涙を拭い合い、口づけを交わし続けた──

優しくしたい T→←自宅へ T



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ayachoko(プロフ) - ましろさん» 初期でこんな面白いのかけるんですか( ; ゜Д゜)サディスティックLOVEを読んだ時から思ってました(*^^*)なんか男性の狡さとか女性の男性受けする立ち振舞いとかわかっててすごいなぁと思ってまして…(’-’*)今のましろさんが書く玉ちゃん、読みたいです(*≧∀≦*) (2017年5月12日 23時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» ぎゃあ、初期の作品クサすぎて(爆)読まれるの恥ずかしいです;;わ、分かりますか?遥か昔、ちょっとだけ夜の世界にいたことあります(笑)ayachokoさんに言われてまた玉ちゃんも書いてみたいなぁってちょっと思いました♪ (2017年5月12日 20時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - そして玉ちゃんかっこいい!!(*≧∀≦*)ましろさんの書く藤北玉はみんな素敵すぎて選べませんっ←違う 続き気になって止まらなくて、今からご飯慌てて作りますっ(笑) (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 途中すごく切なかったけど最後には幸せになれて安心しました!ふふっと笑っちゃうシーンもあって面白かったです(о´∀`о)ましろさんは夜の世界で働いてたことがあるんですか?すごくリアルだなぁと思いまして…ましろさんの作品の女の子はみんな素敵できゅんとします♪ (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - まなさん» わーん、そんなことを言って頂けるなんてとっても嬉しいです;;昔の作品は特殊なのばかりでとても恥ずかしいのですが、最後まで読んで下さってとっても嬉しいです。(*'人'*)(*'人'*)ありがとうございます^^ (2016年11月3日 16時) (レス) id: 92cf8dd04d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2015年11月8日 14時

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