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再会、再び T ページ42

「裕ちゃん」

「分かってる。変なことはしないから」

マスターとの約束は守るよ。

落ち着きを取り戻したオレを見たマスターが、ほっとした顔をしてオレのことを抱きしめた。

「こんなこと裕ちゃんに聞かせてごめんね。裕ちゃんに背負わせてごめんね。でもあたしだって出来ることならAを救ってあげたいって思ってるの。だから──」

何かあったら必ずあたしに相談して頼って。

「ありがとう」

マスターが側についていてくれると思えば、とても心強くて。

オレは素直にお礼を言った。





再びAを見かけた時、どうしようもない憤りと悲しみで、オレは胸が張り裂けそうになった。

公園で見かけた時のAの顔には傷はなかった。

でもあれから2週間、再び見かけたAの顔には酷い傷があった。

青黒く変色して腫れ上がっている右目の下と唇の端。

それが殴られた痕であるのは一目瞭然で。

腫れた痕をなるだけ目立たないように隠しているつもりなのか、Aは大きなマスクと眼鏡をして俯き加減でスーパーの中を歩いていた。

でもそれが逆により一層彼女を痛々しく見せている。

オレは涙が出そうになった。

いつもはっとするくらい美しくて、夜の街を堂々と胸を張って生きていた一流クラブのナンバーワンが、今、こんな風に俯きながら生きているなんて。

Aの笑顔を自分に向けてもらいたい一心で、たくさんの男達が彼女に大枚をはたいていた当時を知るオレには、今のAの姿は見るに耐えなかった。

凛とした姿も、美しい笑顔も、全て今の夫が奪っているのだ。

オレはAを今すぐここから連れ出したくて、買い物中のAに後ろから声をかけた。

「Aさん」

背後からオレに腕を掴まれたAが、びくっと肩を震わせてゆっくり振り返った。

「あっ」

あまりの驚愕に持っていた買い物カゴを落としたAが、声にならない声を上げる。

「ゆ、た」

口を両手で覆うA。

何が起こっているのか、全く把握出来ていないAには申し訳ないと思ったけれど、こんなところで呑気にいきさつを説明する気は毛頭なかった。

オレはAを引き寄せて言った。

「ここじゃ近所の人の目もあるし、怪しまれるからオレの車に乗って。お願い。今すぐ来て」

Aに考えさせる暇さえ与えず、急いで彼女の腕を引いて外へ出る。

「早く乗って」

半ば強引にAを助手席に押し込み、オレはすぐに車を発進させた。

自宅へ T→←彼女の6年 T



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ayachoko(プロフ) - ましろさん» 初期でこんな面白いのかけるんですか( ; ゜Д゜)サディスティックLOVEを読んだ時から思ってました(*^^*)なんか男性の狡さとか女性の男性受けする立ち振舞いとかわかっててすごいなぁと思ってまして…(’-’*)今のましろさんが書く玉ちゃん、読みたいです(*≧∀≦*) (2017年5月12日 23時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» ぎゃあ、初期の作品クサすぎて(爆)読まれるの恥ずかしいです;;わ、分かりますか?遥か昔、ちょっとだけ夜の世界にいたことあります(笑)ayachokoさんに言われてまた玉ちゃんも書いてみたいなぁってちょっと思いました♪ (2017年5月12日 20時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - そして玉ちゃんかっこいい!!(*≧∀≦*)ましろさんの書く藤北玉はみんな素敵すぎて選べませんっ←違う 続き気になって止まらなくて、今からご飯慌てて作りますっ(笑) (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 途中すごく切なかったけど最後には幸せになれて安心しました!ふふっと笑っちゃうシーンもあって面白かったです(о´∀`о)ましろさんは夜の世界で働いてたことがあるんですか?すごくリアルだなぁと思いまして…ましろさんの作品の女の子はみんな素敵できゅんとします♪ (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - まなさん» わーん、そんなことを言って頂けるなんてとっても嬉しいです;;昔の作品は特殊なのばかりでとても恥ずかしいのですが、最後まで読んで下さってとっても嬉しいです。(*'人'*)(*'人'*)ありがとうございます^^ (2016年11月3日 16時) (レス) id: 92cf8dd04d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2015年11月8日 14時

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