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裕太の名前 T ページ35

そうか、だからか。

オレは全てを理解する。

「北山さんは知ってるの?」

sweetの店にAと何度か来た、童顔の優しそうな男の顔が浮かんだ。

「うん。ちゃんとお別れしてきたよ。でも独りじゃ怖かったから太輔を頼っちゃったけど」

「ガヤと?」

ズキリと胸が痛んだ。

Aは重要な仕事の依頼は、オレじゃなくて絶対にガヤを選ぶ。

最初から分かっていたことだけど、でもやっぱりくやしい。

ガヤより男として頼りにされてない気がして。

「裕太?」

そんなオレの気持ちを察したのか、Aがオレを抱きしめる。

「生まれてくる子が男の子だったら、ユータっていう名前を貰ってもいい?」

オレは驚いて、Aのお腹をまじまじと見てしまった。

オレの名前?

「オレの名前を付けるの?」

「そう、裕太の名前。裕太みたいな男に育ってほしいから」

許してくれる?

Aが背伸びをしてオレを見上げる。

いつもオレを優しく、包み込むように見つめるその目がオレは大好きだった。

オレはAの顎を持ち上げ、その小さな紅い唇にキスをした。

しばらく触れるだけのキスを繰り返し、やがて
Aが口を開いた。

「マイペースに見えて、本当は周りをいつも気遣って一歩引いてる裕太の優しさがすごく好きよ。
だけど芯はとても強くて、弱音吐いても決して諦めないところや、飾り立てた偽りの言葉を吐かない裕太が大好きよ。

どうかそのままの裕太でずっとずっといてね」

「褒めすぎ...でしょ」

Aの言葉を聞いているうちに、オレは泣いてるのか笑ってるのか自分でもよく分からなくなった。

大事なものを失った時、人は何を支えに生きていけばいいんだろう。

それは大切な人との想い出。
大切な人から貰った言葉、なんだろうか。

「Aさん、ありがとう」

オレはAに何度も何度もキスをした。

溢れ出る涙が止まらない。

「好き、大好き、大好きだよ、A...」

もう逢えないなんて何だか信じられなかった。

一緒に眠った日々を思い出せば、切なくて、悲しくて。

ずっと、ずっと一緒にいたかったのに。
一緒に眠りたかったのに...

これからは、どうかお腹の中のユウタがAのことを支えてくれますように。

Aを抱きしめながら、オレはそう願わずにはいられなかった。

Six years later T→←最後の依頼 T



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ayachoko(プロフ) - ましろさん» 初期でこんな面白いのかけるんですか( ; ゜Д゜)サディスティックLOVEを読んだ時から思ってました(*^^*)なんか男性の狡さとか女性の男性受けする立ち振舞いとかわかっててすごいなぁと思ってまして…(’-’*)今のましろさんが書く玉ちゃん、読みたいです(*≧∀≦*) (2017年5月12日 23時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» ぎゃあ、初期の作品クサすぎて(爆)読まれるの恥ずかしいです;;わ、分かりますか?遥か昔、ちょっとだけ夜の世界にいたことあります(笑)ayachokoさんに言われてまた玉ちゃんも書いてみたいなぁってちょっと思いました♪ (2017年5月12日 20時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - そして玉ちゃんかっこいい!!(*≧∀≦*)ましろさんの書く藤北玉はみんな素敵すぎて選べませんっ←違う 続き気になって止まらなくて、今からご飯慌てて作りますっ(笑) (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 途中すごく切なかったけど最後には幸せになれて安心しました!ふふっと笑っちゃうシーンもあって面白かったです(о´∀`о)ましろさんは夜の世界で働いてたことがあるんですか?すごくリアルだなぁと思いまして…ましろさんの作品の女の子はみんな素敵できゅんとします♪ (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - まなさん» わーん、そんなことを言って頂けるなんてとっても嬉しいです;;昔の作品は特殊なのばかりでとても恥ずかしいのですが、最後まで読んで下さってとっても嬉しいです。(*'人'*)(*'人'*)ありがとうございます^^ (2016年11月3日 16時) (レス) id: 92cf8dd04d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2015年11月8日 14時

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