最後の依頼 T ページ34
この依頼はAの最後の依頼。
「裕太」
今夜のAはオレをツキと呼ばなかった。
「太輔は元気?」
「元気だと思うの?」
意地悪く返せば、Aは何も言わず俯いてしまい、オレはすぐに後悔する。
「ガヤは元気ないけど、ちゃんと仕事はしに来てるから大丈夫だよ」
否、仕事があるからかろうじて生きているって言う方が正しいかもしれない。
「ガヤとさよならしたってことは、オレともさよならするんだよね?」
オレは先手を打って訊いた。
後手に回ったら絶対泣いてしまうから。
否、先手を打っても泣くかもしれないけど。
「太輔から何か聞いた?」
「ガヤは何も。生まれて初めての失恋だからすぐには立ち直れないだろうってマスターが」
Aが苦しそうな表情でオレを見た。
「2人が優しいのをいいことに、仕事の依頼にかこつけて散々甘えて...2人のこといっぱい傷つけてごめんね」
今更謝っても遅いけど、ごめんなさい。
「謝んないでよ...」
「でも今日でやっと、やっと解放してあげられるからね...」
そう呟いてオレを抱きしめるA。
「今までありがとう...」
何だよ。
何だよそれ。
オレは別に解放なんてされたくない。
傷付いてなんかいない。
Aがオレから離れようとしなければ。
「ずっと飼われてたかったのに...」
「駄目。裕太も太輔も本来の場所に戻らなきゃ」
ずっと聞きたくなかった言葉。
でもいつかは聞かなければならなかった言葉。
今、Aの口からはっきりと言われて、オレもやっとガヤの気持ちが理解出来る。
胸が痛い。
苦しい。
息するのもしんどい。
心の何処かで、もしかしたらずっとオレ達の側にいてくれるかもしれないと思っていた。
Aはオレ達のことがまだまだ必要なはずだと勝手に思いこんでいたから。
けれど期待はあっさりと裏切られた。
ヤバイ、泣きそうオレ。
「これからまたどうやって眠れない夜を過ごすの?」
オレの問いに、Aはゆっくりと自分のお腹を指差す。
「この中にいる子とこれからは一緒に眠るから、だからもう大丈夫」
「赤ちゃん?」
オレはそっとAのお腹に手を伸ばした。
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ayachoko(プロフ) - ましろさん» 初期でこんな面白いのかけるんですか( ; ゜Д゜)サディスティックLOVEを読んだ時から思ってました(*^^*)なんか男性の狡さとか女性の男性受けする立ち振舞いとかわかっててすごいなぁと思ってまして…(’-’*)今のましろさんが書く玉ちゃん、読みたいです(*≧∀≦*) (2017年5月12日 23時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» ぎゃあ、初期の作品クサすぎて(爆)読まれるの恥ずかしいです;;わ、分かりますか?遥か昔、ちょっとだけ夜の世界にいたことあります(笑)ayachokoさんに言われてまた玉ちゃんも書いてみたいなぁってちょっと思いました♪ (2017年5月12日 20時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - そして玉ちゃんかっこいい!!(*≧∀≦*)ましろさんの書く藤北玉はみんな素敵すぎて選べませんっ←違う 続き気になって止まらなくて、今からご飯慌てて作りますっ(笑) (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 途中すごく切なかったけど最後には幸せになれて安心しました!ふふっと笑っちゃうシーンもあって面白かったです(о´∀`о)ましろさんは夜の世界で働いてたことがあるんですか?すごくリアルだなぁと思いまして…ましろさんの作品の女の子はみんな素敵できゅんとします♪ (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - まなさん» わーん、そんなことを言って頂けるなんてとっても嬉しいです;;昔の作品は特殊なのばかりでとても恥ずかしいのですが、最後まで読んで下さってとっても嬉しいです。(*'人'*)(*'人'*)ありがとうございます^^ (2016年11月3日 16時) (レス) id: 92cf8dd04d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2015年11月8日 14時