ETERNAL

別れの理由 F ページ32

不倫なんて平気でする奴だから、すげぇ軽そうな感じのただのかっこつけ野郎かと思ってたのに。

確かにちょっとチャラい雰囲気はあるけれど、女を手玉にとって不倫を楽しんでいるような姑息でずるい感じはしなかった。

俺は複雑な気持ちになる。

こんな奴が不倫とか...。

家族のこともちゃんと大事にしそうに見えるのに。

何か...ショックかも。

北山の質問に、

「太輔のことは好きよ。でもこれから彼とどうなるかは別問題だけど。先ずはみっくんとのけじめを付けにきただけ」

揺るぎない目で北山を見つめ、きっぱり答えるA。

「Aらしいね」

北山が微笑んだ。
もう別れは覆せないと悟った顔だった。

「理由は彼？じゃないんだね」

「妊娠したの」

頭を殴られたかのような衝撃を受けた。

俺はAより先に北山の顔を見てしまい、北山が泣くのではと思ってしまった。

そのくらい北山の表情が絶望しているように見えたから。

「俺の子だよね？」

「うん。騙すようなことしてごめんなさい。ピルを飲んでるって嘘ついて。でもあなたには絶対に迷惑はかけないから。認知もしなくていい。ただ──」

産むことだけは許してほしい。

それだけ許してくれたら、あたしは世界で一番愛するあなたを解放してあげられるから。

俺は思わず自分の口を手で覆った。

じゃなければ大声で叫んでしまいそうだったから。

何言ってんの、何言ってんだよ！

悪いのは全部この男だろ。

なのになんで！

「A、許すもなにもAがそれを望むなら」

「待てよ。お前ふざけんなよ！」

「太輔！」

Aが立ち上がった俺の腕を掴んで、座らせた。

「彼を責めないで、お願い」

「でも、こんな別れ方ってないだろ！」

あんまりじゃないか。

俺がガキすぎるのか。

でもやっぱり理解できない。

したくもないけれど。

「未練は全部ここに置いていくね。ここに来るまでに散々泣いたから。もう振り返らない２度と」

そう言ったAはとても凛としていて、綺麗で、美しくて、俺はただ黙ったままAの手を強く握りしめることしかできなかった。

愛している F→←不倫相手 F

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