検索窓
今日:19 hit、昨日:19 hit、合計:158,043 hit

不倫相手 F ページ31

「大手町?」

高校生の俺にはまったく縁のない駅の名前。

Aに一緒にきてとお願いされ、Aの住む新宿駅から地下鉄に乗り、大手町で降りる。

そこは完全なオフィス街だった。

皇居も近いんだなと呑気に周りを見渡していると、Aに手を握られた。

Aは何度も来たことがあるのだろう。
迷うことなく目的地のカフェへ辿り着く。

「ここで待ち合わせだから」

誰と?と訊こうとして、言葉を飲みこんだ。

訊かなくとも分かってしまったから。

Aの彼氏は新聞社勤めだと前に聞いたことがあった。

さっき通った道に新聞社、あったよな。

しかもこの店も、席が全て仕切られた個室になっていて、いかにも打ち合わせなどに使われそうな店だった。

「太輔、力を貸してね」

俺と並んで座ったAが、テーブルの下で俺の手をぎゅっと握りしめる。

Aの手は震えていた。

だから俺も強くAの手を握り返した、

その時。

「A、遅くなってごめん」

そう言って入ってきた男は、俺の想像していた男とは全く違っていて。

「初めまして、北山です」

男が俺の存在に気づいて、丁寧に会釈する。

なんだよ、この和やかな雰囲気は。

「藤ヶ谷です」

だから俺も立ち上がって頭を下げた。

「みっくん、仕事途中で抜けて来てくれたんでしょ?時間あんまりないだろうから手短に済ませるね」

俺らの間の抜けた挨拶が終わった瞬間、Aが口を開いた。

「今日はね、お別れを言いに来たの。あと鍵も返してもらいに」

目の前の男がびっくりした表情でAを見たのと、俺が驚いてAを見たのは、ほぼ同時だったと思う。

え、え?

俺を連れて別れ話?!

「A、ちょっと待って」

かなり慌てた様子の男に、今、突然別れ話を聞かされたんだろうと思った。

「あのさ、えっと、その男の子のことを好きになったってこと?」

男の子、と言われ、思わずむっとしたが、確かに相手の男からすれば俺なんかガキ同然なのかもしれない。

目の前の男の見た目は下手すりゃ俺ぐらい若く見えるけれど、確か30半ばのはずだ。

少年のようなあどけない顔なのに、意思の強そうな目が、ただの優しい男ではないことを物語っている。

自信に満ち溢れ、包容力もありそうで。

要はぶっちゃけ良い男の部類。

くやしいけれどそう思った。

別れの理由 F→←もっと甘えて F



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (155 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
317人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ayachoko(プロフ) - ましろさん» 初期でこんな面白いのかけるんですか( ; ゜Д゜)サディスティックLOVEを読んだ時から思ってました(*^^*)なんか男性の狡さとか女性の男性受けする立ち振舞いとかわかっててすごいなぁと思ってまして…(’-’*)今のましろさんが書く玉ちゃん、読みたいです(*≧∀≦*) (2017年5月12日 23時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» ぎゃあ、初期の作品クサすぎて(爆)読まれるの恥ずかしいです;;わ、分かりますか?遥か昔、ちょっとだけ夜の世界にいたことあります(笑)ayachokoさんに言われてまた玉ちゃんも書いてみたいなぁってちょっと思いました♪ (2017年5月12日 20時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - そして玉ちゃんかっこいい!!(*≧∀≦*)ましろさんの書く藤北玉はみんな素敵すぎて選べませんっ←違う 続き気になって止まらなくて、今からご飯慌てて作りますっ(笑) (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 途中すごく切なかったけど最後には幸せになれて安心しました!ふふっと笑っちゃうシーンもあって面白かったです(о´∀`о)ましろさんは夜の世界で働いてたことがあるんですか?すごくリアルだなぁと思いまして…ましろさんの作品の女の子はみんな素敵できゅんとします♪ (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - まなさん» わーん、そんなことを言って頂けるなんてとっても嬉しいです;;昔の作品は特殊なのばかりでとても恥ずかしいのですが、最後まで読んで下さってとっても嬉しいです。(*'人'*)(*'人'*)ありがとうございます^^ (2016年11月3日 16時) (レス) id: 92cf8dd04d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ましろ | 作成日時:2015年11月8日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。