彼女の部屋 F ページ3
連れて行かれたのは、新宿駅から歩いて15分程のところにある高層マンションだった。
「Aさんてこんなすごいところに住んでるの?」
「まさか。お店が借り上げたマンションに住まわせて貰ってるだけ。あ、でもワンルームだから狭いけどごめんね」
ワンルームでもこんな都心のど真ん中に建ってるマンションの家賃なんて全く想像がつかない。
きっと相当高いんだろうな。
そんなマンションを店が借り上げてAを住まわせているのは、高額な家賃を払ってでもAが店に利益をもたらす存在だからということぐらい、さすがの俺にでも分かる。
すごい売れっ子なんだ。
現にAの携帯電話からは、電話とメールの着信音が頻繁に鳴っている。
その都度メールを打って送信している彼女に少しイラッとするのは完全に嫉妬だ。
「どうぞ」
Aが部屋のドアを開けて、俺を中へと入れてくれた。
「おじゃましまーす」
一流クラブの売れっ子ホステスにしては、部屋の殺風景さに驚いた。
「仮住まいだから」
いつでも少ない荷物をまとめて消えることが出来るってことか。
「ごめんね太輔、こんな何もない部屋で待っててなんて。帰りたくなったらキーはポストに投げ入れて帰っていい──」
「帰らないよ」
俺はAの言葉を最後まで待たずに首を横に振った。
「帰らないから。待ってるから。だから早く帰ってきてよ」
そう言ってAをそっと抱き寄せれば、驚いた顔のAと目が合った。
どうしてこんなにも惹き付けられるんだろう。
出逢ったばかりなのに。
お互いのことなど何一つ知らないのに。
だけどAの綺麗な目の奥に仄かに見える哀しさと寂しさが、俺の心を何故か苦しくさせて。
苦しくて、愛おしくて。
抱きしめたくなる。
その目の奥に漂う宵の色の意味を俺は知りたかった。
それに触れることが出来れば、俺のこの虚しさも、寂しさも、きっと消えるような気がして。
「だから早く帰ってきて...」
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ayachoko(プロフ) - ましろさん» 初期でこんな面白いのかけるんですか( ; ゜Д゜)サディスティックLOVEを読んだ時から思ってました(*^^*)なんか男性の狡さとか女性の男性受けする立ち振舞いとかわかっててすごいなぁと思ってまして…(’-’*)今のましろさんが書く玉ちゃん、読みたいです(*≧∀≦*) (2017年5月12日 23時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» ぎゃあ、初期の作品クサすぎて(爆)読まれるの恥ずかしいです;;わ、分かりますか?遥か昔、ちょっとだけ夜の世界にいたことあります(笑)ayachokoさんに言われてまた玉ちゃんも書いてみたいなぁってちょっと思いました♪ (2017年5月12日 20時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - そして玉ちゃんかっこいい!!(*≧∀≦*)ましろさんの書く藤北玉はみんな素敵すぎて選べませんっ←違う 続き気になって止まらなくて、今からご飯慌てて作りますっ(笑) (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 途中すごく切なかったけど最後には幸せになれて安心しました!ふふっと笑っちゃうシーンもあって面白かったです(о´∀`о)ましろさんは夜の世界で働いてたことがあるんですか?すごくリアルだなぁと思いまして…ましろさんの作品の女の子はみんな素敵できゅんとします♪ (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - まなさん» わーん、そんなことを言って頂けるなんてとっても嬉しいです;;昔の作品は特殊なのばかりでとても恥ずかしいのですが、最後まで読んで下さってとっても嬉しいです。(*'人'*)(*'人'*)ありがとうございます^^ (2016年11月3日 16時) (レス) id: 92cf8dd04d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2015年11月8日 14時