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指名 F ページ15

「仕事することに決めたのね」

俺が言うよりも先にAに微笑まれ、俺は黙って頷いた。

「正直に言うとね、太輔と寝た日にもうこの仕事を紹介しようって決めてたの」

「え?」

「毎日街をうろついて荒んだ生活するような自分の価値が理解ってない男に、自分の価値を理解らせてあげようかなって思って」

「知ってたの?」

「んー、なんとなく、だけどね」

Aが笑って自分のバッグから手帳を取り出す。

「19日、太輔を指名しよっかな。初仕事、あたしでもいい?」

「え?Aさんなら仕事じゃなくても、俺何でもするよ?」

俺の言葉に、Aが嬉しそうに微笑んだ。

「太輔はあたしを喜ばせる天才ね」

「本心言ってるだけ──」
最後まで言い終わらない俺の唇を、Aの細く綺麗な指がそっと塞ぐ。

「仕事であたしを癒してくれたらそれでいいから。その代わり完璧にね」

「仕事...」

俺は唇を噛み締めた。

出会った時は、お互い惹かれ合い、自然に寄り添い抱き合えたと思ったのに、2回目からは仕事でいいと言うAにショックを受ける。

それはもう心の中まで入ってきてほしくないという意味なのだろうか。

俺はきっと酷く傷ついて泣きそうな表情をしていたのだろう。

「違うわよー太ちゃん」

気付けば、いつの間にか隣に来ていたマネキンが俺の頭をぽんっと小突く。

「Aは太ちゃんがお気に入りだから心配で仕方ないだけよ。初仕事を自分が依頼して慣れさせてあげようっていうAなりの気遣いに決まってるでしょ。そんなことも分からないなんて、太ちゃんも見た目は男前だけどやっぱりまだまだ子供ねぇ」

マネキンの言葉に俺は何も言い返すことが出来ず、恥ずかしくて顔が熱くなった。

Aのことになると不思議なくらい平常心を保てなくなる。

それ以外のことで心が揺れ動いたり乱されたりすることなど、今までなかったのに。

かっこわるすぎる、俺。

「マスター、太輔は原石なの。これから磨いて磨いてどんどんイイ男に成長してくんだからね」

マネキンの言葉に傷付いて黙りこんだ俺のことをとAが慰めてくれる。

そんな風にAに気遣わせている自分が情けなくて。

「Aさんの心遣いありがたいです。俺、Aさんの仕事受けます」

精一杯の強がりでお礼を言った。

早く大人になりたい。

Aの隣にいても釣り合うだけの大人に。

心の底からそう思った。

添い寝の依頼 T→←玉の説得 F



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ayachoko(プロフ) - ましろさん» 初期でこんな面白いのかけるんですか( ; ゜Д゜)サディスティックLOVEを読んだ時から思ってました(*^^*)なんか男性の狡さとか女性の男性受けする立ち振舞いとかわかっててすごいなぁと思ってまして…(’-’*)今のましろさんが書く玉ちゃん、読みたいです(*≧∀≦*) (2017年5月12日 23時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» ぎゃあ、初期の作品クサすぎて(爆)読まれるの恥ずかしいです;;わ、分かりますか?遥か昔、ちょっとだけ夜の世界にいたことあります(笑)ayachokoさんに言われてまた玉ちゃんも書いてみたいなぁってちょっと思いました♪ (2017年5月12日 20時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - そして玉ちゃんかっこいい!!(*≧∀≦*)ましろさんの書く藤北玉はみんな素敵すぎて選べませんっ←違う 続き気になって止まらなくて、今からご飯慌てて作りますっ(笑) (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 途中すごく切なかったけど最後には幸せになれて安心しました!ふふっと笑っちゃうシーンもあって面白かったです(о´∀`о)ましろさんは夜の世界で働いてたことがあるんですか?すごくリアルだなぁと思いまして…ましろさんの作品の女の子はみんな素敵できゅんとします♪ (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - まなさん» わーん、そんなことを言って頂けるなんてとっても嬉しいです;;昔の作品は特殊なのばかりでとても恥ずかしいのですが、最後まで読んで下さってとっても嬉しいです。(*'人'*)(*'人'*)ありがとうございます^^ (2016年11月3日 16時) (レス) id: 92cf8dd04d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2015年11月8日 14時

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