玉の説得 F ページ14
「オレはねー、そうだな、ガヤって呼ぶね」
さっそく玉に勝手にあだ名を付けられる俺。
「初めてだよ、その呼ばれ方」
「わぁ、初めて頂きました」
玉の気の抜けた、冗談めいた物言いに、何だか張りつめていた気分が一気に消えていく。
「俺にできんのかな、この仕事」
ぼそっと呟けば、
「オレにできるんだから、できるよ」
返ってきた言葉は至ってシンプルで。
「簡単に言うね」
俺が溜め息まじりに笑うと、玉がえっ?と目を見開いた。
俺の些細な苛立ちに気づいたのかもしれない。
「だって、ガヤの方がきっとこの仕事向いてるよ」
「だから、会ったばかりで良く分かるなって言ってんの」
「え?分かるよ」
「あのなぁ」
返す言葉が見つからず、俺は苦笑した。
ここの人間達は皆そうなのか。
Aも、マネキンも、そして目の前にいる俺と同じ年の男も。
言葉をあれこれ交わさずとも自分の内面に入り込まれてるような感覚。
見抜かれてるような、丸裸な自分を見られてるような、そんな落ちつかなさと同時に居心地の良さという相反する気持ちに心は入り乱れる。
こいつなんて、特にぼーっとしてるように見えるのに。
上手く言葉に出来ないけれど、他の人間の心の中にすんなりと入れる魅力が玉にはあるような気がした。
「オレは結構限定なんだよね」
「限定?」
唐突な玉の言葉の意味が分からず、聞き返した俺に、
「あのね、クライアントさんはまずマスターの面接受けるんだよね。それでその内容に適材だなっていう人間に依頼を受けさせるんだけど、今までそれで大きな失敗がないのは、マスターの人選がすごいからだよ。あの人超見る目あるの、あんなんだけど」
玉はそう説明して、
「今この仕事してる人間はオレ入れて5人いるんだけど、オレが一番仕事少ないんだよねー」
あはは、と笑った。
同じ男ながらに可愛いなと思ってしまう笑顔。
「お前すっげー人気ありそうだけどな」
「違うんだよ、この仕事って絶対ガヤみたいなのが人気出るのよ。ま、百聞は一見になんとかって言うでしょ。だからさ、やってみない?」
玉の全く熱意の籠ってない誘いに、俺は笑いながら、
「分かったよ」
と答えた。
否、答えさせられたというべきか。
玉にかかると、どんな大変なことでも大したことないような気になってくる。
こんなんでオレ、ちゃんと教えたことになるのかなぁ。
玉は不安そうな顔をしていたけれど、俺は玉に礼を言って席を立ち上がり、フロアーへ戻った。
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ayachoko(プロフ) - ましろさん» 初期でこんな面白いのかけるんですか( ; ゜Д゜)サディスティックLOVEを読んだ時から思ってました(*^^*)なんか男性の狡さとか女性の男性受けする立ち振舞いとかわかっててすごいなぁと思ってまして…(’-’*)今のましろさんが書く玉ちゃん、読みたいです(*≧∀≦*) (2017年5月12日 23時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» ぎゃあ、初期の作品クサすぎて(爆)読まれるの恥ずかしいです;;わ、分かりますか?遥か昔、ちょっとだけ夜の世界にいたことあります(笑)ayachokoさんに言われてまた玉ちゃんも書いてみたいなぁってちょっと思いました♪ (2017年5月12日 20時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - そして玉ちゃんかっこいい!!(*≧∀≦*)ましろさんの書く藤北玉はみんな素敵すぎて選べませんっ←違う 続き気になって止まらなくて、今からご飯慌てて作りますっ(笑) (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 途中すごく切なかったけど最後には幸せになれて安心しました!ふふっと笑っちゃうシーンもあって面白かったです(о´∀`о)ましろさんは夜の世界で働いてたことがあるんですか?すごくリアルだなぁと思いまして…ましろさんの作品の女の子はみんな素敵できゅんとします♪ (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - まなさん» わーん、そんなことを言って頂けるなんてとっても嬉しいです;;昔の作品は特殊なのばかりでとても恥ずかしいのですが、最後まで読んで下さってとっても嬉しいです。(*'人'*)(*'人'*)ありがとうございます^^ (2016年11月3日 16時) (レス) id: 92cf8dd04d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2015年11月8日 14時