子猫との別れ F ページ2
野良の子だし色んな病気や感染症にかかってる恐れもあるから、まずは動物病院で診て貰おうというAの提案は正解だった。
簡単な自己紹介をし合いながら、俺達は動物病院へ向かって歩く。
Aがクラブのホステスをしていると知った時、正直俺はショックだった。
別にその手の職業に偏見があるというわけではなかった。
人の目を惹く程の美人で会話も上手なAには確かに似合っていると思ったけれど、たくさんの男達がAに優しい笑顔と言葉を貰っているのかと思ったら、何となく面白くない気持ちになってしまったのは事実で。
会ったばかりなのにな。
思わず苦い笑みが溢れる。
俺の方こそ猫じゃん。
実際、Aにとっては17歳のガキの俺なんて子猫のようなものだろう。
普段は同級生の女達をガキ扱いして、大人の女と適当に遊んでいる自分のはずなのに、Aの前では何1つ自信が持てず、不安になる。
Aは俺と歩いていて恥ずかしくないかな。
そんなことも気になって、一緒に歩いている間もそわそわと落ち着かない。
やがて、
「太輔、着いたよ」
Aが目の前の動物病院を指差した。
*
「太輔、大丈夫?」
動物病院を出た途端道端座り込んだ俺のことをAがそっと抱きしめた。
優しい声と、甘く良い匂いと、柔らかく俺を包むAの感触と温もりに、俺の心は少しずつ落ち着きを取り戻す。
「ノラの子は病気の子が多いから」
「うん、分かってる」
「最後に太輔に優しく撫でて貰えてあの子はとても幸せだったね」
Aが俺の頭を何度も撫でる。
俺の方が猫だよやっぱり。
俺が拾った子猫は既にFIPという子猫にとっては致死病である感染性腹膜炎にかかっていた。
苦しむ前に安楽死を、という獣医の言葉に俺はショックの余り言葉が出なかった。
「分かりました。お願いします」
返事をしたのはAだった。
きっと俺に余計な罪悪感を持たせないために。
たった1時間足らず抱いていた猫を失うことがこんなに悲しいとは正直思わなかった。
飼う、と決意した時から、既に家族のつもりだったんだ、俺は。
Aが俺の涙を指で優しく拭う。
そして、
「おいで、太輔」
俺の手を優しく引いて立ち上がらせた。
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ayachoko(プロフ) - ましろさん» 初期でこんな面白いのかけるんですか( ; ゜Д゜)サディスティックLOVEを読んだ時から思ってました(*^^*)なんか男性の狡さとか女性の男性受けする立ち振舞いとかわかっててすごいなぁと思ってまして…(’-’*)今のましろさんが書く玉ちゃん、読みたいです(*≧∀≦*) (2017年5月12日 23時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - ayachokoさん» ぎゃあ、初期の作品クサすぎて(爆)読まれるの恥ずかしいです;;わ、分かりますか?遥か昔、ちょっとだけ夜の世界にいたことあります(笑)ayachokoさんに言われてまた玉ちゃんも書いてみたいなぁってちょっと思いました♪ (2017年5月12日 20時) (レス) id: df578ce2f7 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - そして玉ちゃんかっこいい!!(*≧∀≦*)ましろさんの書く藤北玉はみんな素敵すぎて選べませんっ←違う 続き気になって止まらなくて、今からご飯慌てて作りますっ(笑) (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ayachoko(プロフ) - 途中すごく切なかったけど最後には幸せになれて安心しました!ふふっと笑っちゃうシーンもあって面白かったです(о´∀`о)ましろさんは夜の世界で働いてたことがあるんですか?すごくリアルだなぁと思いまして…ましろさんの作品の女の子はみんな素敵できゅんとします♪ (2017年5月12日 17時) (レス) id: b1988500b3 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - まなさん» わーん、そんなことを言って頂けるなんてとっても嬉しいです;;昔の作品は特殊なのばかりでとても恥ずかしいのですが、最後まで読んで下さってとっても嬉しいです。(*'人'*)(*'人'*)ありがとうございます^^ (2016年11月3日 16時) (レス) id: 92cf8dd04d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ましろ | 作成日時:2015年11月8日 14時