【文スト】転生したら兄に後戻りできないレベルで愛されてしまっているのだが。

今から話数制にしてもいいよね？ ページ8

A視点




私は一回深く息を吸って吐いてから、今度こそキリッとした顔になって太宰さんをを睨む。




『よくも、まぁ、私の前でそんなふざけた振る舞いが出来るものですね。

………幼少期、私は確かに貴方に助けられました。そのことについて、感謝はしています。

いやあれが救いか正しいかと言うと微妙ですけど、まぁ助かっていたのは事実なので、感謝はしています。』



「照れるねぇ。」



『………もう長くを語る気はありませんので、単刀直入に言います。』




なんでこいつこんな飄々としてんの？ちょっと態度だけで良いから申し訳なく思ってくれない？

いや腹の中で申し訳なく思ってるとして、だとしたら態度に出してくれない？そうして？




いやもう怖いよ何で飄々としてんの？

何コイツ………普通に怖いよ………だって私コイツの所為でそういう目に会ってるんだもん………




よし、ここは一言ビシッと決めて私ももうただの子供ではないと示さねば。

絶対許さないぞ、という固い意志を示さねば。いやちょっと揺れてるから全然固くは無いけど。




かつて兄と一番似ていると称された、光の無い鳶色の瞳をゆらりと兄に向る。

そして真っ直ぐ目を見て、視線をかち合わせ、上達した笑みを口元だけに浮かべて、自分でも驚くほどに冷たい声を持って言う。




『許さない』




シンプルな一言。極めてシンプルだ。

そして私は人の心を人一倍見て来たのでよく知っているが、こういうのは長ったらしく言うよりもシンプルな一言が意外と効くもんである。




太宰さんの心の内は読めないし心理学とかも通用する訳ない。

なのでこの一言を太宰さんが如何思ったかとか全く分からないが、其の瞳が一瞬、酷く揺れた様に見えた。見えただけだ。




私は踵を返してその場を去った。鎖はもうないのにその場でじっと動かない兄を残して。

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