唐突な閑話休題・2 ページ40
NO視点
足取り軽やかな紳士に連れられ、男は彼女が今居るという邸宅に付いたプールへと向かった。
向かって、プールサイドに着いて、愕然とした。
そこに居たのは、ただただ、本当に___それ以外に言いようが無い程___美しい女だった。
シルクのような肌が暗闇にぼんやりと浮かび上がっていた。
瞬く度ふわりふわりと羽のように靡く力強い長いまつ毛は濡れていて、束になっていて意志の強い輝きを放っている。
吊り上がったエメラルドの瞳も、全てが全て、見ただけで人を調伏させるのではと思わせる程に強いエネルギーを秘めていた。
水着に窮屈そうに収まったバストにかかる長い茶色がかった白色の髪はまるで白檀の様で。
例えどんなに上等な糸だろうとも、彼女の髪に敵う事は無いのだろうと、冷静でない頭で男は理解した。
ゾッとするほど彼女は、今、美しかった。
男は息を呑んだ。恐れすら抱いた。気圧された。いや、そんな生温いものではない。
体中の細胞が時の流れから外れ、取り残されたように動かなかった。息すらできなかった。
だのに、眼に見えない熱い何かがそれと相対するかの如く濁流のように身体中を流れ、脳を焼いた。
彼はこれほど美しい女に近づいたことが無い。いや、これは人間か?
目の前に居るものが人かどうかすら男には判断が付かなかった。
天使か、神か、はたまた悪魔か。
ただ、人の領域を超えた美しさである事だけを、理論とか感情とかそんなのに変えられる前の思考の根源たる本能のような部分が、漠然と理解した。
女はほっそりとした、然し肉感的な肢体を滑らかに動かして顔にかかった髪をかき上げた。
男の心臓が激しく喚いた。脳の一番奥の部分がいやに冴えていた。いや、熱を感じすぎて壊れたのか?
そして女は、てらりと妖しく月明かりに照らされた瞳をするする滑らかに動かして、視線を滑らせ、男の方を見た。
男の中で何かが爆ぜた。激しく、しかし消えぬように収まらぬように緩やかに。
男は、ようやっと、何かの枷が外れたのか壊れたのか、動くことが出来た。
男は狂喜に噎せた。人生で一番、きっとこれからも味わう事が無いだろう程、酷く興奮して、歓喜に打ち震えた。
そして、男は紳士と同じものに成ったことを悟った。
ここからもう二度と、元に戻れない事も。
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紅(プロフ) - 終わっているですと!? (2月20日 0時) (レス) @page48 id: c840862e70 (このIDを非表示/違反報告)
くまさん - お願いします!!!終わらないでください!超好みの小説なんです〜! (12月10日 1時) (レス) @page48 id: 888b8ee33d (このIDを非表示/違反報告)
メープル - こういうのホンっと好きです!続きをお願いします!!!! (12月9日 14時) (レス) @page48 id: e52a8096f8 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - おわた? (12月2日 10時) (レス) @page48 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
日向 - 終わっ…て…いる…? (9月8日 16時) (レス) @page48 id: 8f5d606c19 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐教信者 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年4月20日 9時