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「今日も手が込んでるね」
そう言って智実さんが覗いた鍋の中はポトフだ。ちょうど美味しそうな新じゃががあったから買ってみたのだ。ちゃんと一からスープも作っている。
「智実さんに粗末なものを食べていただくわけにはいきませんから」
そうだ。智実さんに変なものを食べさせて、健康に害をきたしたら切腹ものだ。智実さんの命は私が預かっているも同然。ちゃんと気合いを入れなくては。
「・・・・・・俺別になんでも食べるよ」
「へっ、」
「マックも食うし、ファミレスも行くし、コンビニ飯にもお世話になりまくりだし、俺そんな坊ちゃんじゃないからね?」
「そ、そんな、坊ちゃんとか失礼なことは・・・」
焦る私に智実さんはクスクスと笑った。
「気負わないで。美詞の料理はなんでも美味しいから」
そう言って微笑んだ智実さんに沸騰しそうなほど顔が熱くなる。これはポトフのせい、ポトフの湯気が熱いだけ。
挙動不審な私に智実さんはまた笑うと着替えてくるねとキッチンを出ていった。
そうだ、これは智実さんの気軽なものも食べたいという遠回しのお願い。普段お仕事でお高いものを食べていたら時々庶民的な味が羨ましくなるのかも・・・!!
なんて気の使えないんだ、私は!!
自分の失態に額を打つと私はさっそく明日の献立を練り始めた。
*
着替えてきた智実さんに思い出したかのように私は尋ねる。
「えっと、お風呂にしますか?ご飯にしますか?」
「・・・それとも私?って聞かないの?」
「へっ、」
そんな、恥ずかしいこと言えるわけがない。
「ふふ、冗談だよ。美詞は可愛くてからかいがいがあるね。ご飯食べよう。作りたてでしょ?」
「は、はい」
私はぎこちなく頷くと、料理を盛り付けにキッチンに戻った。
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作者名:まるたちばな | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/marutatiba1/
作成日時:2020年12月25日 20時