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「百瀬様、お待ちしておりました」
準備を終えて家を出た私たちはお店へ向かった。
「準備をいたしますので、こちらにどうぞ」
智実さんとわかれて部屋の中に入ると、何人かのスタッフさんがお出迎えしてくれる。
中に入って一番最初に目に入ったのはこの間選んだ色打掛だった。
「ヘアメイクをしますのでこちらに」
美容室にあるような大きな鏡の前に座る。
メイクを終えた顔はいつも自分でするのとは全然違って、とても華やかに見える。髪の毛も丁寧にまとめてもらって、大きな花の簪がつけられた。
「次に着付けを行いますので、こちらに」
「はい」
最初の撮影は一番最初に目に止まった色打掛を着る。
私も習い事や家が旅館ということもあり、着物の着付けはできるが、こんなに手早くはできない。さすがプロだ。
「それでは神社の方に移動いたします。駐車場に車を準備しておりますので、ご案内致します」
後ろに女のスタッフさんが回って打ち掛けの裾を持ち上げる。着物のためいつものようには歩けないが、よく分かってくれているスタッフさんも歩幅を調節してくれた。
車についてドアが開けられる。
「･･････美詞･･･」
目を見開く智実さんに戸惑うとすぐに平常通り優しく笑って「乗りなよ」と声をかけてくれた。
それにハッと我に返って車に乗り込む。扉が閉められ、運転手さんと担当さんと智実さんと私の4人だけ。
変かな･･･何も言ってくれなかった･･･
ドアが開けられた時の智実さんの表情が脳裏に過ぎる。いつもなんでも褒めてくれるし、何かしら感想をくれる。
でも、今日は何も言ってくれなかった。
私は不安を抱えたまま窓の外に目を向けた。
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作者名：まるたちばな | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/marutatiba1/
作成日時：2020年12月25日 20時
