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黙り込んだ私の頭を智実さんは優しく撫でた。
「何かあった?嫌なことされてない?」
タオルの隙間からそっと顔を覗いてみると、智実さんは優しく微笑んでいた。
いじめられてるとか思われちゃったかな。
「・・・・・・傘がなくて困ってる人がいたから貸してしまいました。瑠生に途中まで入れてもらったんですけど、自分のせいだし、駅からは走って帰ってきたんです・・・すみません」
変な心配をかけるのは嫌だから、正直に話してまた視線を下げた。
すると上からため息が降ってくる。
やっぱり馬鹿だよね・・・
「美詞はお人好しすぎ。自分より他人を優先しすぎ。・・・でも、そういう優しいとこが好き」
そう言って智実さんの大きな手が、優しく私の頬をタオルごと包み込んだ。
「さっきお風呂の準備しておいたから入っておいで。お風呂から出て温まったらデートしよ」
「・・・デート、ですか?」
デート自体珍しいのに、その上こんな時間に・・・?
「買い物デート。まだ、ご飯の買い物行ってないんでしょ?」
そう言って智実さんは視線だけ玄関を見渡した。
私の足元にあるのは学生カバンだけだ。
「・・・それと」
智実さんは続けた。眉間に少し皺を寄せて、ふくれっ面で私の目をじっと見つめた。
「伽くんと相合傘したなんて妬いちゃうな・・・俺ともしよう」
智実さんの言葉にドキッと肩が跳ねる。
そうか、全く意識してなかったけど相合傘って恋人としたりするものでもあるのか・・・
「・・・はい・・・しましょう!」
「ふふっ、でもその前にお風呂ね」
「あ、」
私がお風呂で温まると、智実さんと一つの傘に入って近所のスーパーに向かった。
食材を買って、また二人で一つの傘の下に並んで歩いて帰る。
私が濡れないように傘を傾けてくれた智実さん。
その手は瑠生のときのようには断れなくて、守ってもらっているようでとても安心した。
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作者名:まるたちばな | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/marutatiba1/
作成日時:2020年12月25日 20時