画面越しなんてそんなもの ページ2
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スマホとかパソコンで簡単に小説が作れるサイトがあって、そこで俺の隣にいる女子は文字書きをしているらしい。
彼女が利用しているサイトは夢小説というのが多いらしい。
結構利用者の年齢層は低いらしいけど、なんか良さそうだね、たぶん。
「俺の隣にいる文字書きさんよ」
「……それ私のこと?」
「逆にお前以外に誰がいるの、A」
「知らない」
彼女は鈴木A。
俺の…まあ、幼馴染というか。幼馴染以上、恋人未満的な。そんな微妙すぎる存在。
ミステリアスとまではいかないけど、結構大人しい感じ。
「なんだっけ、夢小説?」
「…が、何?」
「や…それ書いて、なんの意味があんのかなーって」
「……自己満とか、趣味とかもあるけど」
「ん?」
横を見て彼女の顔を見ようとするが、彼女の長く垂れる髪がその顔を隠し見ることができない。
ただ、手に握られたスマホの画面を見ると、彼女の利用する夢小説を作れるサイトのホーム画面だった。
今、俺といる時も書いてるのかと思いながら彼女の言葉を待つ。
「…夢を与えたいし、世界を変えたいし、誰かを支えたいって思う…から」
「…ふーん」
まだ高校生ってのにすげぇこと考えてんな、こいつ。
政治家とか向いてそうじゃん。世界変えれそう。
「……笑う?」
「は?なんで」
「…中二病みたいって、引く?」
「引かねぇよ。第一、Aは真剣なんだろ?」
コクリと小さく頷く彼女だけど、顔は俯いていてどこか悲しそうだった。
スマホを握る手が少しだけ、ふるふると震えていた気がした。
何かあったの、と小さく聞くと、彼女はゆっくり話し始めた。
「…友達とか、家族に笑われた」
「……なんで?」
「馬鹿みたい、そんな小さなサイトで…夢見すぎ、って」
「……」
「真剣なのに、本気なのに、頑張ってるのに、努力してるのに」
「A」
「私の夢は、叶えられないものかな……?」
ここが、俺の部屋で良かったと心から思った。
この場所なら、
彼女を抱き締めても、誰にも見られることはないから。
「……大丈夫だろ」
「…っ」
「叶えられるよ、大丈夫。Aが頑張ってるの、知ってるから」
サイトでコミュニケーションがとれると言っても、それは画面越し。
相手が何をどれだけ頑張って、何に傷ついて、何に笑っているのか。
相手が自分をどう思っているのか。まず、相手がどんな人間なのか。
それは誰にも、わからないんだ。
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明花(プロフ) - 雨宮咲那さん» この作品にも目を通していただけて嬉しいです。共感できるところがあったのなら幸いです。勿体ないお言葉までありがとうございます。次回作も全力で頑張りたいと思います、本当にありがとうございます。 (2018年7月17日 18時) (レス) id: 4be523f4d8 (このIDを非表示/違反報告)
明花(プロフ) - #まどかさん» お褒めの言葉ありがとうございます。そう言っていただけて恐縮です、期待に応えられるよう精一杯頑張りたいと思います。本当にありがとうございます。 (2018年7月17日 18時) (レス) id: 4be523f4d8 (このIDを非表示/違反報告)
雨宮咲那(プロフ) - 今作も読ませて頂きました。夢主が作者の視点というのが私自身初めて読んだので少し不思議な雰囲気だと思って読み進めていたら、共感できるところも増え、さすが明花様だなと思いました。これからも明花様の素晴らしい作品読ませて下さい (2018年7月17日 7時) (レス) id: ef0ba5aad5 (このIDを非表示/違反報告)
#まどか(プロフ) - こんばんは!いつも読ませて頂いてます!明花さんの作品はいつも面白くて切なくて感動して…。すごいなぁといつも思います!これからも応援してます!頑張ってください!(^ ^) (2018年7月16日 23時) (レス) id: 3fa50f0937 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:明花 | 作成日時:2018年7月16日 21時