第6話 ページ6
連れてこられたのは、ウォールマリアの壁上だった。
ウォールマリアの壁上は、前には壁外、後ろには街が見下ろせる。
暗闇で目を慣らして無灯火で登って来たので、彼らがここに居る事はバレていないだろう。
「こんな所に訓練兵が勝手に登ったら、懲罰ものだな」
「バレればね。でもバレない。誰も、壁の上にも外にも興味はないからね。壁外に勝手に行こうなんて死に急ぎもいないし」
そう言うと壁外側に足をブランと投げ出して座ったAの隣にエルヴィンも座る。
そこから見える夜空はとても綺麗で、壁外に広がる平原の先は真っ暗闇で吸い込まれそうだ。
「君はここに何度も来ているのか？」
「まあね」
「たまに姿をくらませるのはこういう事か」
「内緒よ？」
悪戯っぽく微笑んだAにエルヴィンも微笑み返した。
「君はどこに届けを出したんだ。上位組だっただろう」
「駐屯兵にした」
「なぜ駐屯兵に？」
「壁の上からの景色が好きだから」
Aは揺れる髪を手で押さえながら言う。
「フラゴンは調査兵にしたみたい」
「らしいな。だから君もそうしたのかと思った」
「ふふふ、流石に命を賭ける仕事を幼馴染がいるからって理由で選ばないよ。仲良くしてやって」
Aはゴロンと寝ころんで夜空を眺める。
エルヴィンはそんな彼女をただ黙って見た。
「……何か思うところでもあるの？」
「え？」
「エルヴィンが私に話しかけてくる時って、いつも何か思ってそうだから」
エルヴィンを見ずにそう言ったA。
「私はここでエルヴィンやフラゴンを見送る。壁外に行く時は駐屯兵がこの大砲で壁付近の巨人を追い払うでしょ？他にも助けられることがあったら言って」
コン、と手近な大砲を小突くAに、エルヴィンは微笑んだ。
「何故そんな風に気を回してくれるんだ？」
「これでも仲良くなったかなと思ってるから。そんな人の手助けをしたいって思うのは自然な事だと思うんだけど」
「なら1つ、いいか？」
「？」
「壁外調査前と、帰還した夜。ここにいてくれないか」
Aは視線をエルヴィンに向ける。
「少し残った俺の不安と恐怖を吐き出させてほしい」
そう言ったエルヴィンにAは小さく笑う。
「変なの。そこまでして壁の外に行きたいなんて」
「…ふふ、そうだな」
「流石は変態だわ」
「君くらいだよ、そんな事を言うのは」
2人はしばらくそこで話をした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ララ(プロフ) - pさん» コメントありがとうございます。亀の歩みですが…よろしくお願いします^ ^ (2022年6月3日 12時) (
レス) id: 4ef94921e2 (このIDを非表示/違反報告)
p(プロフ) - ララさんの新作がでてたなんて！！もう既に面白すぎて更新が待ち遠しいですっ！楽しみにしてます(^^) (2022年6月3日 0時) (レス) @page6 id: f1a393f59c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ララ | 作成日時：2022年5月18日 3時
