第55話 ページ7
それから数年が経った。
Aはあの日からエルヴィンとの身体の関係を断ち、かといってリヴァイと恋人になることもなかった。
しかしAとエルヴィンはあの日の翌日から既にいつも通りに接していて、事情を知っている者ならば恐ろしさすら感じる程に、何も変わらない関係性を保っている。
ただ、エレン達がやってきて3人の関係が少し変わる。
リヴァイが誘っても、Aがあまり了承しなくなっていた。
急遽エレンの巨人化実験等が行われることが決まったので、彼女がハンジにつきっきりだからだ。
それに対してリヴァイがやきもきした時期があるが、彼は彼で自分の班にエレンを編成されることになり、今度はAよりも大忙しとなった。
エレンの巨人化実験にはハンジが関わる為、Aと顔を合わせる事も多いリヴァイだが、なにせエレンを閉じ込めている地下室で会う程度なので、2人きりになる機会もそういう雰囲気になることもなく、ただ日々が過ぎて行く。
そんな忙しさのお陰なのか、他人からは至って今まで通りのAとエルヴィンだったが、実のところ当人同士ではどこかギクシャクしたものを感じていたのに、最近は随分自然と話しができるようになっていた。
「なんだかんだで、今が一番安定しているなぁ」
というのが、ハンジの最近の口癖だ。
ーーーーーー
「ハンジ、起きて」
ある朝、Aはハンジの部屋にいた。
「今日から新兵の訓練でしょ。起きて」
Aはハンジを無理矢理起こすと、彼女が歯を磨いている間にその髪をいつものように結んだ。
「そういえばさぁ、今年の新兵の首席、名前知ってる?」
「ええ。先の巨人侵攻で活躍した、エレンの友人の…確か、ミカサ・アッカーマン」
「そう!気になるんじゃない?」
「まあ、気になるけど…」
Aは髪を結び終えて、ハンジの肩をポンと叩いた。
「とにかく、今日から来月の璧外調査までは、新兵の訓練とエレンの実験でやる事が山積みなんだから。シャンとして」
「わーかってるって!」
2人は部屋を出た。
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時