第93話 ページ46
Aの部屋を出たハンジは、兵舎を飛び出した。
「はあ。私は何を言おうとしたんだ」
ガリガリと頭をかきながら向かったのは男性兵舎で、受付に言づけてリヴァイを呼んでもらった。
リヴァイは「こんな時間になんだ」と言いながらも玄関まで降りてくる。
「飲みに行くよ」
「…は？」
「いいから！」
「財布持ってきてねえ」
「奢るよ！」
ハンジはリヴァイを無理やり連れだして飲み屋街に繰り出した。
数時間後。
ハンジはべろべろに酔っていた。
リヴァイは肘をついて、隣で机に突っ伏しているハンジを見下ろす。
「…何も聞かないんだねぇ」
突っ伏したままのハンジが言う。
「リヴァイには酷なことかもしれないけどさ。Aが私と約束する前にエルヴィンと会う約束してきちゃったんだ〜」
「…」
隣のリヴァイは何も言わない。
「前までなら誰に何を誘われても「ハンジの予定を聞いてから」って言ってたのに…前から約束してたとは言えさぁ」
その言葉にリヴァイはしばらく固まるが、「そうか」と呟く。
「…それをよりによって俺に聞かせるか？」
「だってこの痛みを分かち合えるのは私達だけじゃないか！リヴァイも目を覚ませば？」
散々飲んだのにまた１杯飲み干すハンジに、リヴァイは眉間にしわを寄せた。
「もうやめとけ」
「いいじゃん！いつもはAに無理矢理止められるけど、今日はとことん飲むんだから！」
見るとハンジはワンワン泣いている。
そんな彼女を見ていると、リヴァイは感情をここまで爆発させられる様が羨ましくなった。
「…。俺はずっと前から分かってた」
「へ？」
「アイツは本当はずっとエルヴィンの事が好きだったんだ。お前、長く一緒にいてそんな事も分からなかったのか？」
「…だって。絶対最後には私の所に戻ってくるって自信があったから。気にもしてなかった」
ハンジは涙と鼻水を一緒に拭く。
「まだお前はAの中で一番だろ。お前とエルヴィンではステージが違う」
「そうかなぁ」
「ああ。アイツは俺といるようになってしばらくは俺寄りだったと思うが、それでもお前とエルヴィンに何かあったら駆け付けてた。エルヴィンに対しては無意識だったが、それが余計に腹が立つ」
「リヴァイも完敗？」
「そうだな…勝つ気満々だったんだが。残念だ」
そう言ったリヴァイを、ハンジが伏せ込みながら見上げる。
「じゃ、傷心者同士一緒にいようか」
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作者名：ララ | 作成日時：2021年5月7日 20時
