第91話 リヴァイ視点 ページ44
ヒストリアの父親を倒した朝。
リヴァイはAの病室に向かった。
エルヴィンはその後の処理で忙しそうだったし、ハンジはヒストリア奪還の際に負った怪我の治療で一時入院する事になったから、彼女が1人でいるのが気になったからだ。
病室に入ると相変わらずAは目を閉じたまま。
ベッドの隣に椅子を持って行くと、額にかかった髪をなでる。
(俺がついてりゃあな)
まさかAがケニーと鉢合わせるとは思わなかった。
「A」
試しに名前を呼んでみる。
「俺も、アッカーマンって名前らしい」
ケニーに聞いたことを、聞こえていないであろうAに告げた。
産まれた場所や年齢から、Aとは親戚ではないのだろうが、同じ「迫害される」一族だった。
思えばリヴァイは、母親が王都の地下に落ちのびた理由を知らなかった。
でも母親の名前がアッカーマンであった事と、以前Aに聞いたアッカーマンの事を考えると、母も彼女の父と同じ理由であそこにいたのかもしれない。
そして、アッカーマンと名のつく者が総じて戦闘能力が高い点も気になる。
(俺たちは、一緒に生きていけるんだ。一緒に、アッカーマンを背負って生きていける)
リヴァイはAの顔をジッと見つめた。
すると瞼がピク、と動く。
「A?」
もう一度声をかける。
するとAがうっすらと目を開けた。
そして、本当にとても小さな声で
「…エル、ビン?」
と呟いた。
しかししばらくして目をちゃんと開けると、リヴァイの名を呼ぶ。
リヴァイは、医者を呼んでくると言って病室を出た。
正直なところ、かなりショックだった。
自分とエルヴィンは全然似ていない。
なのに、第一声にエルヴィンの名前を呼んだ。
リヴァイは医者を呼んだあとハンジに声をかける。
ハンジならきっとエルヴィンを誘って見舞いに行くだろう。
リヴァイは自室に戻ると、苛ただしげに椅子に座った。
(もう、俺が入る余地はねえのか…?)
リヴァイはどこを見るでもなく、ただ茫然とした。
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時