第68話 ページ21
ライナーとベルトルトの隙をついてエレンを救出したエルヴィンは、地面に転がる。
その上をエレン救援の援護に回るべく、Aを含めた兵士が飛んでいくのが見えた。
エルヴィンは各自撤退するように指示を出す。
近くにいた兵士がエルヴィンを起こし、そこら辺にいた馬に乗せてくれて撤退を始めた。
しかし撤退の最中、思いもよらない事が起きた。
鎧の巨人が、無差別に巨人を投げつけてきたのだ。
ただでさえ片手で馬を操っていたエルヴィンは、目の前に投げられた巨人を避けられず再び地面に投げ出される。
片腕を失い、何も出来ないエルヴィンはただそこに座り込んだ。
沢山の兵士がエルヴィンを庇って死んでいく。
ここからは見えないが、エレンの巨人化がない辺り、彼も無事ではないのだろう。
動けないエルヴィンに、正面から走ってくる巨人が見えた。
(俺も、死ぬのか)
そう思ったが、目の前の巨人は力なく倒れる。
倒れた巨人の後ろから飛んできたのはAだった。
もう何体巨人を倒したのか、疲労で踏ん張りも利かないらしく、巨人を切ったままの勢いで地面に転がった。
地面を2、3回転してしばらく動かないAに、エルヴィンは近づく。
うつ伏せで倒れても、刃こぼれしたブレードをしっかり握りしめている。
死んではいないが、ゼェゼェと全身を揺らして呼吸をしていた。
彼女との付き合いは長いが、ここまで疲れ切った様子を見たのは初めてだ。
名前を呼ぶと、ゆっくり起き上がる。
「はぁ、はぁ…エルヴィンの刃とボンベ…、貸して。私の…、もう無い」
エルヴィンの了解を得ずに、エルヴィンの腰の空気ボンベに手をかける。
「A、もうやめるんだ」
「やめない。私はまだ武器があれば戦えるわ」
「その足腰じゃ、立ち向かっても殺されるだけだ」
「は?」
Aは返り血と土にまみれた顔でエルヴィンを睨んだ。
「死んでいった兵士達に、顔向けがあぁだこうだ言ってたのは、誰?」
「こんな時くらい…一緒にいてほしいと願う事も許されないのか」
エルヴィンはAの手に触れる。
本当はブレードを握るのも精いっぱいなのだろう。
Aの手は痙攣していた。
しかしAはその手を振り払う。
「許されないし、まずエルヴィンは死なせない。その為に今、無茶するの。だから諦めずに撤退して。私は帰れないかもしれないけど…ハンジに、宜しくね」
力強くそうAが言った時、凄まじい衝撃が地面から伝わった。
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作者名:ララ | 作成日時:2021年5月7日 20時