「リベロ同士仲良くしようぜ」 ページ4
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放課後になって、教室にやって来た黒尾。顔が整っているから、入り口に立つだけでクラスの女子は盛り上がっていた。
逃げ出さないようにとAのカバンを黒尾は全て持った。
流石に勉強道具一式を持たれていては帰るに帰れない。しかも、弁当箱も副カバンには入っている。
このまま明日になって、弁当箱が体育館で異臭を放つのも嫌なため、Aは渋々黒尾に着いていった。
「着いたぞー」
「…はあ」
本当に着いてきてしまった。
何度かAは黒尾から荷物を奪い取ろうと試みた。
が、黒尾にひょいひょいと躱された。背後からソ〜ッと近付いたら荷物は前で持たれるし、力づくで取ろうとすれば手の届かない上で持たれるし。
挙句の果てに、本当の猫が威嚇してるみたいだと言われ、諦めることにしたのだ。
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「ここが俺らの部室ね〜」
ガチャリと開けられたドアの先に広がるのは、むさ苦しい男だけの空間。
陽気すぎる黒尾がチーッス!なんて片手を上げれば、Aに集まる視線。
皆靴紐を結んだり、着替えたりしていたのにも関わらず、動きを止めた。
「「杣A!?!?」」
一斉に口を開いたと思えば自分の名前。
びくりと肩をあげたAは、隣に立つ黒尾を睨むも、本人はどこ吹く風。
ああ、厄介なことになった。
「俺より小さい…!」
「そんな変わんねーよ」
夜久衛輔と名乗る人が黒尾に蹴りを入れた。こんなに良い音するんだなあ、とAは感心。
「俺もリベロなんだよ。リベロ同士よろしくな!」
「…すんません、俺、もうバレー出来ないんで」
「…そっか、なんかごめんな」
「いえ」
眉を下げて謝る夜久に、Aは申し訳無さでいっぱいだった。
普段は自ら握手なんてするような柄ではないが、同じポジション(だった)同士で固く手を握りあった。
*
そして、練習が始まるまで夜久と盛り上がっていた。
「女の子はショートだろ」
「俺もショート派っすね」
「なのに黒尾はロングって言うんだよ」
「ええ…ショートの魅力に気付いとらんのですか…」
「そう」
「まあ結局のところ似合っとるんやったらどっちでもいいんですけどね」
「Aイケメン…!おい、黒尾も見習えよ!」
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作者名:まるすけ | 作成日時:2021年12月30日 0時