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「関西の猫、トサカに会う」 ページ3

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「やあAくん。どう?音駒でバレーしない?」
「…はあ……?」



教室の窓際の席を陣取ることが出来て喜んでいた1ヶ月前。
入学式初日こそ見渡す限り知らない人で、ここにいる人は自分のことを誰も知らないと思っていた。

しかし、甘かった。

トサカ頭をした長身男は、会った初日から名前呼び、更には部活勧誘までしてくるのだ。しかも、バレー部の。



「いやあ、びっくりしたよね。研磨が興味を持ったかと思ったら、関西の猫がいるなんてね」
「…生憎、バレーはもうせんと決めとるんで」
「ふうん?」



胡散臭そうな笑みを浮かべる黒尾と名乗る男は、前の席の椅子を引いて、Aの方を向いて椅子に跨って座る。



「どうしてもAくんにバレー部入ってほしいナ〜」



下からAを覗き込む黒尾。
黒尾の目をじいっと見つめると、思わずAは吹き出してしまった。



「黒尾さん」
「ん?」
「…キモいっす」
「辛辣!」



冗談を言わないと、飲み込まれそうだった。
丁度よいタイミングで鳴った予鈴で黒尾は椅子から立ち上がった。



「…まあ、考えときますよ」
「…!おう」



まだ、自分がバレーができるんじゃないか。

自分が腰を痛めたのは夢なんじゃないか。

何度思ってきたことだろうか。


明日の朝目覚めると、腰なんて痛くなくて。

また侑と治とバレーが出来るんじゃないかって。

何度思ってきたことだろうか。



そんなこと、あるわけないのに。





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作者名:まるすけ | 作成日時:2021年12月30日 0時

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