Prologue ページ1
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「え、今なんて？」
「やから、高校から東京行くことになったんやってば」
液晶に映る2人が今まで押し合いへし合いしていたにも関わらず同時に身を乗り出す。
高校バレー界随一の双子、通称宮ツインズは同じ高校に進むと思っていた幼馴染の姿を入学式で見なかったことに違和感を感じ、電話をかけたのだった。
「俺言うたやん。送別会してもろたし」
「あ」
「…せやった」
同じチームに所属していた3人はどこへ行くにしても一緒だった。
「で、Aはどこの高校なん？」
「東京の音駒ってとこ」
「音駒…聞いたことないなあ」
「ふふ、まあ、全国で会おな」
それだけ言い切ると、Aは電話を切った。
真っ暗になったスマホの液晶。そのカバーには男3人で撮ったプリクラが貼られていた。
「…全国、か」
長時間座っていたためか、ずきりと痛む腰を擦って立ち上がる。
腰を撚るとボキボキボキッと恐ろしい音を立てた。
バレーにとって腰を痛めたことは致命的だった。
最後の試合で無理をしたのが響いた。
身長が足りなくて、それでもレシーブに長けていたAが選んだポジションはリベロだった。
言わずもがな腰を落とさなければいけないリベロは、徐々にAの選手生命を削っていった。
“杣Aが拾って、宮侑がセットして、宮治が打つ”
一連の流れを止めたくなかった。小学生からずっと流れてきた流れを堰き止めたくなかった。必死の思いで繋いだ一本は、優勝へと繋がった。
そして、その大会でAはバレー生命に終止符を打った。
宮ツインズといると高校でもバレーをすることになる。
そう思ったAは2人から離れるべく、東京の高校へと進学を決めた。
――はずだった。
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作者名：まるすけ | 作成日時：2021年12月30日 0時
