【歌い手】僕がきみにプロポーズする5つの理由【短編集】 (ページ12)

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I give it you. from伊東歌詞太郎ページ12

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「僕と結婚してくれませんか」

「……不束者ですが」

なんてやりとりをしたのは、彼女が日本にいたとき。多忙なんですよ、僕の奥さまは。今はオーストリアにいるとか。無駄にお上手な自撮りが送られてきたよ。行きたいなー、オーストリア。

はじめて出会ったときに、求婚はしたんですよ？自分の子どもを産ませたいと思うくらい、素晴らしい女のひとだったから。もし可能なら、もうひとりの母になって欲しいくらいに。

そう言ったら、彼女こう言ったんですよ。
「太宰治みたいなひと、信じられないわ。中原中也になってから出直してきなさいよ」
って。

今度は、あなたがいるから幸せを感じられるって言ったんですよ。そしたら今度は、
「無責任ね。私がいなくなったらどうするの」
って言われました。もっとロマンティックなのがいいわ、とも。

つぎは、花を携えて。今度はなんて言われたと思います？
「平安貴族か石川啄木のつもり？もし前者だったら私のこと古い女って言ってる？」
とか。

まあこのへんから、かなり尖ったレディーであることはわかるんですけど、その彼女から交際のお申込みがあるなんて思いませんよね。夢にも。露ほども。

フラれた三人の文豪たちより、僕の言葉が聞きたいなんて言われたら仕方なくない？

「新婚旅行はどこに行きます？青森？岩手？山口？」

「同じ轍を踏みまくってるけど大丈夫？」