儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

守りたいもの 8 ページ38

…気になってた。


きっとモデルじゃなかったら

私は玲於に見つけて貰えてなかったから。



「何それ…？がっかりなんかしないよ。
それに俺、…あんまり驚いてないでしょ。
才能、あるから正直…勿体ねぇなとは思うけど、
好きでやってるようには見えなかったもん。」



『…へ？…へぇ、私ってそうだったんだね。
…そう見えてたんだ、知らなかったよ…。
なんか時々、…玲於ってさ、私よりも私を
解ってるよね、…マニア？ストーカー？』


「おい…だいぶ失礼。でも案外ガチかも。
もうね、エゴサもしまくってる。くくっ。」


『…ひぇ。』




「まぁさ、だから昨日の事も察してる…。」



おでこをくっつけて射るような目で見られる。

心臓がドキンと跳ねた。



「俺も会場で、ケンゴさんと挨拶したからさ。
…Aから話して欲しい、って思ってる。」



"二人で解決して"


…白濱先輩の声を思い出す。



本当は玲於を巻き込みたくなかった。

でも、見透かされてる。



…私は玲於の背中にしっかり腕を巻き着けて

会場でケンゴさんと話した事を伝える。

…あの時の怖さが蘇ってひどくドキドキした。



『…あの人、怖かった。嫌な、感じだった…。』


「…会いたいとか、言われた？」


『そう、なのかな。…服を見に来て欲しいって。
…あと、仲良くして欲しい人がいるって。』



"チッ！"

今まで聞いた中でも一番大きな舌打ちの音…。


「何なんだよ、ムカつく…。
……俺の方で、ちょっと考えるわ。
Aは、黙ってて。勝手に動かないで。
いい？…出来る？」


『うん。あの…、』


「ん？」


『う、ううん…、時間だよ、仕事。』


「…おう。うっしゃ行くか！」



玲於はポンポンと背中を優しく叩いてから

私と一緒に立ち上がって、一つキスをくれた。





『いってらっしゃいっ！』



閉まるドアを見ながら少し後悔が湧いてくる。



…写真データの事、言えなかった。



だけどもしかしたらハッタリかもしれない。


そうだよ、あんなに厳重に管理してたもん。

手に入れられる事の方が不思議だよ。



私は考えたくない事を自分の都合のいいように

解釈して見ないフリをした。





きっと大丈夫…。


きっと、大丈夫…。


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