儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

守りたいもの 9 ページ39

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…ツアーに向かう背中を見送った翌日。


いつも通り大学からスタジオへ向かい

仕事を終えて帰宅、しようとした時だった。



東「カオルさん、時間あります？」


お世話になっている出版社の担当の東さんに

声を掛けられて、男女数人のモデル仲間と

一緒に食事に行く事になってしまった。



もちろん正直、乗り気じゃない。



これまでは母が現場に立ち会う事が多くて

こういった付き合いは行かずに済んでいた。


でも、急激に膨らみ始めた母のお腹がさすがに

隠せなくなってきてしまって…。


半月ほど前から、一人で仕事をこなすように

なっていた私には、…断れなかった。



玲於とだったら行けないキラキラしたお店。


思いの外、楽しい時間を過ごした。



東「じゃあ、来月号もよろしくお願いします！
タクシー来てますから、順にどうぞ。」



家の遠い人からタクシーに乗り込んで行く。


東「カオルさんに来てもらえて良かったなぁ。
なかなか深いお話する機会無かったから。」


『すみません、実は人見知りな方で…。』



何故か私は東さんに絶え間なく話し掛けられて

結局、一番最後の順番になってしまった。



東「…きっとまた、懲りずに来てくださいね。」


『…？あ、はい是非。今日はご馳走様でした。
おやすみなさい、失礼します。』



何事もなく普通の一日が終わるはずだった。






ケ「僕、送りますよ。」



私の乗ったタクシーのドアが閉まる寸前、

突然現れたケンゴさんが乗り込んできた。



『えっ！？いや！困りますっ！
あのっ、東さんっ！』



外に立つ東さんに助けを求めて慌てる私を

ケンゴさんは気にも留めず、

運転手さんにどこかの住所を告げた。


そしてゆっくり走り出したタクシーの窓越し、

東さんに手を挙げた…。





＿嵌められたんだ…





ケ「…高校からの悪友なんですよ、東。
お久しぶりですね、カオルさん。
痺れ、切らしたよ。もう3ヶ月以上も待った。」



私の方を振り向いたケンゴさんは

怖いくらい穏やかな表情をしていた。


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