儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

守りたいもの 2 ページ32

亜嵐「カオルちゃんっ？」



『…ぇ？……白濱、先輩？』




ケンゴさんの数メートル後ろに見えた顔に

私はようやく自分を取り戻す。



ケ「チッ…」

ケンゴさんは白濱先輩を振り向かずに

私の手の中に素早く名刺を差し込んだ。



ケ「あ〜、面倒臭くなりたくないからこれ、
俺のLINEも書いてある。待ってるね。じゃ！」



バクバクした鼓動が、手の中の紙切れが、

少しの時間に起きた事の重大さを教えてる。



…コピー、…って、

……写真データの、コピー…？


…まさか、そんな事…



眩暈がしそうでぎゅっと目を瞑った。




亜嵐「…平気？」


…手の上に感じる暖かい感触に目を開ける。



亜嵐「…今の、ケンゴさんじゃなかった？」



白濱先輩の声に、心の底から安心した。


私の前にしゃがんで目線を合わせてくれる。

昔のような変わらない優しさが嬉しかった。



亜嵐「…ね？Aちゃん、大丈夫？
震えてんじゃん。…何か、言われた？」



私はブンブン首を左右に振って笑ってみせた。


『大丈夫、何にも無いです。
忘れてて、失礼な態度しちゃったから、
何か、固まっちゃって…。ふふ…』


亜嵐「Aちゃん、俺には嘘は通用しない。
…どれだけ君を見てきたと思ってんの？
あんなに迷惑かけちゃうくらい、…俺、
凄い好きだったんだからさ。
…本当に、…ごめんね。
……謝るのが遅くなっちゃったね。」



ああ、こういう人だった。

白濱先輩は素直で暖かい優しい人なんだ…。



心の中のわだかまりが、驚く程すぅっと

静かに溶けていくのを感じた。



心からの微笑みが自分の中から湧いて来る。


…もう、大丈夫。

小さく首を振って、過去に区切りをつけた。




『…いつも、心配させててごめんなさい。』



白濱先輩は本当に安心した様子で笑って、

マンガみたいに、"ほっ"っと声を出した。


『先輩は、今日は、何で？』


亜嵐「…回しにきた！お忍びDJ修行！」



いつも通りの眩しい笑顔をくれる。

私も負けないように、にっこり笑った。



亜嵐「…うん。ありがとうね、Aちゃん。
俺、もうちゃんと先輩だからさ、安心して。
…さっきの事は無理に言わなくていいけど、さ…
……ただ、聞いて。
Aちゃんにとって嫌な事は、間違いなく、
玲於にも嫌な事で、絶対に隠しちゃいけない。
必ず二人で解決して。」


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