儚く、甘く、…繋ぐ。【5】［Reo.S］

きっかけ 7 ページ17

…ちゃんと決めてた。


…分かりましたって、言おう。


…こういう事があったら、そうしようって。



玲於の近くに居る人から

はっきり別れるように言われたら、

玲於が無理をする前に

私が身を引いて助けなきゃいけないって。



玲於の背中を抱き締められなかった時から、

そうやって、小さく決心してた。



私に出来る守り方なんて、それ以外ない。



奈々さんに呼ばれた時から覚悟してたのに

いざ言われてしまうと、…やっぱり辛い。



『…あの、私…』



("分かりました、身を引きます")



言わないとって思うのに…言えないよ。


奈々さんの気持ちだって、間違ってない。



だけど…言えない。



奈々さんの眼差しから逃げて俯いてしまう。



言いたくないんだ、

…私、言いたくない。



『あ、の…、私…』


奈々『…カオルさんならすぐ彼氏出来ますよ。
そんなに綺麗なんですから。
玲於以外に目を向けてみたらどうですか？
…別に、
…玲於じゃなくても、いいでしょ？』



玲於じゃなくても？


…玲於じゃ…、なくても…？



違う。


…きっとそれだけは、…絶対に、…違う。


玲於じゃなきゃダメだったから、私…


一緒にさえ居られたら、

私、本当にどんな関係でも良かった。


大切で、大好きで、他には何もいらなかった。


…大切な、大切な、…私の本当の気持ち。



それだけは伝えたくて、顔を上げた。




『あの私、…っえっ？！』




でも、その私の両目が捕らえたのは、

奈々さんの顔じゃなくて、さらに上。



…奈々さんの後ろで仁王立ちで腕を組む人。



ダルそうな目で私を見つめてる。



『……れ…、お…？』



「…おい、電源切ってんじゃねぇよ。」



突然の玲於の声に、

奈々さんが思わず立ち上がる。



奈々『玲於…！ 何で…。』


「…奈々の仕事用の携帯、追跡してもらった。
位置情報ってヤツに初めて感謝したわ、俺。」


玲於はわざわざマスクを下げて、

奈々さんにわざとらしい笑顔で告げた。

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