刀の思い出/福沢諭吉 ページ20
「…すまん」
寝床から態々抜けて接待をするAに、私は謝った
「いいえ、仕事ですから…三日後に取りに来て下さいね」
訪ねたは良いがAは体調を崩していた…いや、正確には病だ
「病院には行かぬのか?」
「そんなお金ないんで…こんなですから」
そう言って部屋を見渡す…老朽の進んだ小さな家
「こんな研ぎ師に頼みに来るのなんて、貴方位ですよ銀狼さん」
「其の呼び方は止めろと言っているだろう」
「御自分で研げるでしょうに」
「私はお前より腕の立つ研ぎ師にあった事などない」
「それは光栄ですね」
彼女は白い顔で微笑む…
「皆さんお元気ですか?」
「嗚呼……無理せずとも良いのだが」
余りに窶れていた為声を掛けるが
「いえ、やらせて下さい」
「…では三日後、取りに来る」
Aは乱歩と同じ齢で、社を立ち上げた時に出逢った…若いながらに腕は確かで
親を亡くし、病を患いながらも仕事をしていた
「社長…あの子さ」
「乱歩……何も言うな」
判っている…Aは永くない。恐らく昨日の依頼が最後になる
そして刀を受け取った翌日…Aはこの世を去った
刀を抜くと、とても丁寧に手入れがされている
病に侵されても、其の仕事は完璧だった
刃毀れ一つなく整えられた刃は、美しく黒光りしていた
誰もいなくなったAの家を訪ねると、手入れの道具と紙が置いてあった
"良かったら貰って下さい。年季も入ってますし、良い道具なのでよく馴染みますよ
長い付き合いなので家と一緒に壊されるのは忍びなくて、貰って欲しいんです…福沢さんに"
紙には丁寧に、手入れの順序まで記載されていた
其れから一年……譲り受けた手入れ道具で何度も愛刀の手入れをしてきた
自分でも其れなりに進歩したとは思うが…
銀色に輝く愛刀を眺める
「矢張り…お前の様にはいかぬな」
「此処一年、手入れをしてるのをよく見る様になったねぇ」
「刀を大事にされているのだろう」
「大事にしてるのは刀じゃないよ」
「?…では何をあんな大事そうな目で見ておいでなのですか?乱歩さん」
「あれはね……思い出だよ」
ーーー
駄目だ…よく分からない感じになった
福沢さんは難しいな…
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ヒメ* - 梶井くんんんんんんんんんんんん (2017年4月30日 19時) (レス) id: 96291ce8a6 (このIDを非表示/違反報告)
アクエリアス(プロフ) - 黒猫 ??ω??さん» 分かりました! (2016年12月21日 23時) (レス) id: aac96d2a4f (このIDを非表示/違反報告)
黒猫 ??ω??(プロフ) - 賢治君の話がみたいです! (2016年12月21日 15時) (レス) id: a4b4b6f943 (このIDを非表示/違反報告)
アクエリアス(プロフ) - レイ猫さん» 良かったです!リクエスト有難うございました! (2016年12月11日 10時) (レス) id: aac96d2a4f (このIDを非表示/違反報告)
レイ猫 - ふあぁぁぁ!!双黒!!読んだあと泣きました…!ありがとうございます!これからも更新頑張って下さい! (2016年12月11日 10時) (レス) id: 66bc355b76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アクエリアス | 作成日時:2016年7月11日 23時