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少しの間、静かな時間が訪れる。
ずっと鳴り止まない激しい心臓の鼓動を感じながら、画面の向こう側からの言葉を待った。
『…そうか。フィディオがAに告白か…まあ、いずれはすると思ってたけどな』
「え…マーク、知ってたの…？」
『当たり前だ。あいつの事は一番警戒してたからな』
全く知らなかった。
マークがフィディオの気持ちに気付いていたなんて…
…ここで驚いている場合じゃない、まだ続きを話さなきゃ。
「えっと、それでね…」
『分かってるよ』
私が言うよりも早く彼が口を開いた。
『Aがどう返事をしたのか、聞かなくても分かる。こうやってちゃんと話してくれるのが、俺の思っている事の何よりの証拠だ』
「マーク…」
彼には何でもお見通しらしい。
それに私を本当に信頼してくれているからこその言葉。
こんなにも胸を締め付けさせるのが上手いのは、後にも先にも彼しかいない。
『ありがとな、話してくれて』
「ううん…マークも、聞いてくれてありがとう」
もうさっきまでの緊張感はなかった。
それどころか、こうして彼と繋がっていられるという事への安心感から来る温かさを、じんわりと感じていたんだ。
電話を切った後、ふとさっきの出来事を思い返してみる。
マークにフィディオとのデートの事は…言えなかった。
本当は話すべきかもしれなかったけれど、どうしてかそこまでは話せなかった。
大切な友人との思い出を…今はまだ、自分の中だけに留めておきたかったのかもしれない。
いつか私にもっと勇気が出たら…ちゃんと話そう。
とても素敵な景色を見たんだ、って……
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作者名：結川 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/17663132
作成日時：2021年8月23日 16時
