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私達を乗せた船はゆっくりと川の上を進んでいく。
船を漕ぐ音だけが静かに響く中、私は目の前を流れる景色に釘付けだった。
「わあ…」
夜のイタリアエリアの街並みはとても幻想的で輝いていて。
オレンジ色の光が優しく彩るこの空間は、どこか別世界のようだ。
歩いて見るのとはまた違って、この光の間を船で眺めるのも違う美しさを感じられた。
「これだけじゃないよ。上を見てごらん」
フィディオの言う通りに顔を上げて上を見る。
今度は空に無数の星々が輝いている気色が広がっていた。
「船から眺めると、本当に天の川が流れているみたいだろう？」
「うん…綺麗……」
こんなロマンチックな景色、なかなか見る事はないだろう。
もし彼が…隣にいてくれたら……
しばらく目の前を流れる景色に見惚れていると、フィディオが口を開く。
「マークと一緒に見たかった？」
驚いて咄嗟に空からフィディオの顔へと視線が移る。
そんな質問をした当の本人はどこか楽しそうに笑っていた。
「えっ…と……」
「ごめんごめん、困らせるつもりはなかったんだ。どう？気に入ってくれた？」
内心まだ少し戸惑いが続く中、改めて彼に向き直る。
「うん…とっても。私、少しでもフィディオが元気になってくれればと思って来たんだけど…これじゃあ逆みたいだね」
「そんな事ないさ。俺のわがままにこうして付き合ってくれただけで、十分なんだから」
彼はふと空を見上げてぽつりぽつりと呟くように話し出した。
「電話で伝えた俺の気持ち…本当は俺が決勝戦で優勝した時に伝えたかった事なんだ。まさかこんな形になるなんて思いもしなかったけど…」
「フィディオ…」
それを聞いて納得した。
オルフェウス戦の前日や当日の試合後に見せたあの真剣さ…
今思えば、私に想いを伝える覚悟があったからこそだったんだ。
「こんな私の事、好きになってくれてありがとう。想いを伝えてくれて…ありがとう。私も、フィディオが好きだよ。だからこそ…貴方には幸せになって欲しい」
これが彼に伝えられる、私の心からの気持ち。
青い瞳はオレンジの光と共に私を映している。
「礼を言うのはこっちなのに、二回も言われちゃったな…俺からも言わせてもらうよ。ありがとう、A。俺の気持ちを聞いてくれて。これからも友達として、よろしくな」
目の前に差し出された彼の手。
それはこの先も変わらぬ友情を築くための誓い。
私は頷いてからその手をそっと握った。
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作者名：結川 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/users/17663132
作成日時：2021年8月23日 16時
