僕らは出来ない

製造ナンバー・NO.543 ページ2

機械音だけが響く人気のない部屋。新たな妹達は、３メートルはある大きなカプセルに入っている。私が生まれる時も、誰かがこうやって様子を見に来ていたのだろうか？

「……」

やはり、どうにもこの場所は落ち着かない。早く何処かへ駆けてしまいたい。

途端、足音が近づいてくる。ぺたぺたという音なので、裸足なのは容易に想像できた。
少女は冷めた目で辺りを見渡す。
研究者は靴を履いているので近づいてきているのは自分の姉妹。そんなことも分からない程、馬鹿に作られていない。もしそうなら、失敗作の中の失敗作だろう。


「……！…………」

少女の名はコヨミ。
製造ナンバー、NO.543

思いを音にすることが出来ない。即ち、言えない。
少女の口にあたる部分には、きつくきつく黒い包帯が巻かれている。


＿＿面倒は、大嫌いだ。それは、この研究所もそうだ。面倒、面倒。早く此処から出たい。それから、誰にも目が付かない場所で。指を指されない場所で静かに暮らしていたい。


「…おい、こんなところで何やってんだよ」

「……」

コヨミは返答に困った。元々話せないのだから、困る以前の問題だが。

「ちっ…グズグズしてんなよ。仮にも頭は良い筈だろ。突っ立ってんじゃねぇよ。それにアタシの妹ならもっと出来が上じゃないとな。」

少々気の荒い姉に促されて、コヨミは背を追いかけるのだった。









・・・・・・

NO.543 コヨミ 言えない
〈データ〉
身長 １６１ｃｍ
体重 ４７ｋｇ
性格 面倒嫌い
好物 肉
年齢 １４歳くらい
備考 お姉さんっぽい妹
悩み 目に光が宿らない

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