第5話 ページ8
助ける？助ける…あぁ、さっき絡まれてた奴のことか。
「雑魚同士の戯れなんてほっとけばいいのに。関わっても面倒なだけじゃん？
こーんな大ケガしちゃってさぁ…」
『！？』
大きな手で、みぞおち部分を這うようになぞられる。
そのゾワゾワした気味悪い感覚を押し殺すように、むりやり思考を巡らせるが…うまく言葉がでてこない。
「ねぇ………きいてんの？はやく答えて…？？」
耳元で囁かれる甘い声。甘美というには程遠く、ねっとりドロドロとした湿度の高い甘ったるさを感じた。
『っ……
面倒とか、勝手に決める必要…ないですよね。』
「…あ？」
『たしかに俺にとっては関係のないことでしたけど…
なんつーか…弱ってる奴を見たら、勝手に体が動いてたというか…そんだけ、です。』
突き刺さるような視線を背中に感じながらも、なんとか言葉を繋いだ。
口から出まかせに言ったんじゃなく、本当のことだし…。
あの弱々しい下級生を見たら、あいつのこと…スグリのことと、重ねてしまったから。
「あっそ。」
…自分から聞いてきたくせに、返ってきたのは興味なさそうな乾いた言葉。
「はい、かーんせ〜い。どぉ？いたくなーい？」
『！いつのまに…』
ケガした部分は綺麗に巻き終わっていた。
正直、どうせ雑にされるだろうからあとで自分で巻き直そうと思っていたんだけど…意外に器用な人らしい。
『あ、ありがとうございます。おかげで掃除続けられそうです。
それじゃ_______っ！？』
立ちあがろうとした瞬間に腕を引かれ、ぎゅ〜〜っという効果音がつきそうなくらい抱きしめられる。
…いわゆる、バックハグというやつ？いや……なんで？？
『あ、あの……離してくれません…？？』
返事もなく、ひたすら抱きしめる力は強くなる。
これじゃあ完全に「まきつく」状態…いや、「しぼりとる」のほうが合ってる…？
『ちょっ苦し…！！』
ついには叫ぶことも許されなくなる。
痛い、痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたい！！！
このままじゃ、潰れ_______
「帰る。」
『………は』
突然解放されて、床に転げ落ちた俺は拍子抜けする。
「…なに？もっとぎゅうぅぅってされたいの？」
『(((ﾌﾞﾝﾌﾞﾝﾌﾞﾝﾌﾞﾝ』
全力で首を横に振ると、「あはっ♡」と笑って男は背を向けた。
「そーだ、言い忘れたわ。
オレぇ、フロイド・リーチっていうの。
これから仲良くしよーね、ロミー…♡」
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作者名：フリスク18 | 作成日時：2023年11月12日 0時
