★炎を燃やす月 ページ33
「スタッフさんたち、大丈夫かしら?
少し遅い気がするのだけれど……」
茉優ちゃんが心配そうに呟いたその時、
控え室の扉がノックされる。
扉が勢いよく開いて、困り顔のスタッフさんが
焦ったような急ぎ足で入ってきた。
「すみません、トラブルが起きまして……」
歯切れ悪くそう言うスタッフさんに優しく笑いかけて、
茉優ちゃんは穏やかに問いかける。
「私に出来ることはありますか?」
トラブルの内容を尋ねるのではなくて、
自分に出来ることを聞くことで、
スタッフさんの緊張を和らげたのだ。
その神対応と呼んでも過言ではない行動を
とっさに取れる茉優ちゃんに、私は感服する。
「実は、向こうの社長さんから、こんな内容では
撮影は認められないと言われまして」
「それは……どうしてでしょうか?」
がっくりと肩を落とすスタッフさんを気遣いながら、
茉優ちゃんは続きを促す。
「さぁ……わかりません」
「理由は言わず、ただ認められないと?」
「はい……」
スタッフさんの頼りない返答に、茉優ちゃんも
困ったようにその白い額に眉根を寄せた。
シャープな顎に細い手を当てて、考え込む。
その姿はまるでどこかの女探偵さんのように
知的でミステリアスで、かっこいい。
スタッフさんは既に煮詰まってしまっているようで、
頭を抱えたままため息をついている。
一生懸命考えたアイデアをそんな風に否定されれば、
誰だってやる気を無くしてしまうだろう。
私も何かアイデアを出そうと頭をひねったが、
台本に悪いところは見つけられない。
それぞれに悩むこと数分。
三人寄れば文殊の知恵なんて言うけれど、
どこを直せば良いのかも分からない状態で
いいアイデアなんて出てきそうも無く。
しびれを切らした茉優ちゃんがパタンと手を下ろし、
閉じていたアメジストの目をぱっちりと開く。
「いいわ。直接聞きに行きましょう」
そして、ためらいなくそう言った。
「いやいやいや、む」
「大丈夫です」
スタッフさんはきっと、“無理です”と言おうとしたのだろう。
でも茉優ちゃんは、それに被せるようにして、
鋭く、力強く、根拠の無い大丈夫を放った。
まるで、無理だなんて言わせない、とばかりに。
「はっ、はい」
その気迫に押されて、スタッフさんが頷く。
茉優ちゃんはいつも通りの微笑みを浮かべて、
でも瞳の中には闘志の炎を燃やして、
控え室の扉を開け、スタジオへと出陣した。
ラッキーカラー
あずきいろ
ラッキーアイフレソング♪
新たなるステージへ(I Believe)
45人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
茉凜(プロフ) - ルンってきたさん» ありがとうございます〜。受験生なので毎日は無理ですが、細々とマイペースに更新できたらと思っています。もしよろしければ、これからもお付き合いください! (2019年5月10日 18時) (レス) id: b85dc48253 (このIDを非表示/違反報告)
ルンってきた - 更新待ってました!これからも頑張ってください! (2019年5月10日 18時) (レス) id: 5511db2e34 (このIDを非表示/違反報告)
茉凜(プロフ) - みららさん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年4月18日 17時) (レス) id: b85dc48253 (このIDを非表示/違反報告)
みらら - 面白いです!ストーリーも素敵です。尊敬します!頑張ってください! (2019年4月17日 21時) (レス) id: baef1a099d (このIDを非表示/違反報告)
するめちゃん - 茉凜さん» これからも頑張ってください。応援しています! (2019年4月17日 17時) (レス) id: baef1a099d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:茉凜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Marinn4/
作成日時:2019年2月16日 9時