六等星～進撃の巨人～ (ページ16)

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＃14 過去の記憶ページ16

『…』

どこを走ったのかは覚えていない。

けど、私はいつの間にか訓練兵団の寮に来ていた。

今夜は解散式だったから、みんなはまだ町のレストランにいて、戻ってきていない。

私は誰もいない寮の冷たい壁にもたれかかり、そのままズルズルと地面に座り込んだ。

目の前には、ただ暗い森と、星空があるだけだった。

…ここは相変わらず星がきれいだな。

あの日も星が綺麗だった。

星の観察をしてたら、わけもわからずここへ…

そしてエレンたちに出会って友達になり、

巨人が来てお母さんとレイシーは喰われた。

あの後、お父さんに再会して、泣いて喜んだっけ。

シガンシナ区からトロスト区に引っ越して、ギリギリのお金で家を建てて、

パンを売ったり花を売ったりして何とかお金を稼いだ。

皆がだんだん笑顔を取り戻してきて、町にも活気が出てきた頃、

お父さんは、夜遅くに黙って出掛けることが多くなった。

しかも二人で稼いだ大切なお金を持って…

『お父さんどこに行ってたの？』

私が聞くと、

「何でもない」

そう静かに答えるだけだった。

私はだんだんお父さんを疑うようになった。

もしかしたら夜遊びに行ってるのかもしれない。

私たちのお金を賭けごととかに使ってるのかもしれない。

最初は、お父さんも疲れてるんだから仕方ないと思ってた。

でも、ある日お金を貯めてた袋を見ると、お金がごっそり無くなっていた。

悲しかった。

ここまで頑張って貯めてきたのに…

私は決心した。

訓練兵団に入ろう、

こんな家なんか出ていこう。

前から訓練兵団に入ろうとは思ってた。

でもごっそり無くなったお金を見てさらに決心が固くなった。

『お父さん、私訓練兵団に入る』

私がそう言うと、お父さんはただひとこと、

「やめなさい」

そう言ったきりだった。

お父さんは収入の半分を稼いでる私を行かせたくないんだ。

年に一回の募集がちょうど１週間後だった。

私は黙って家を出ていった。

それからは、会ってもないし手紙も出してない。

『うぅ…』

また涙が溢れてきた。

お母さん、レイシー……

私は強くなれなかったよ

また昔のこと思い出して泣いてるし…

それに、エレンに調査兵団に入ることを反対されたのが、すごく悔しい…

足音が聞こえたのはその時だった。

しんとした空気の中に、ザッザッと砂利をふむ音が響いている。

私は咄嗟に身構え、寮の建物の後ろに隠れた。

足音はこちらに近づいてきていた。