≪急募≫海常家族の母やりませんか？【家族パロ】

第12話：誕生日よりも＊＊＊ ページ39

肝心の幸にーちゃんが見当たらないのだ。
コートを幾度見回しても、いるのは一番上の兄だけ。

涼太「お母さん、幸にーちゃんは?」
声援にかき消されそうな末っ子の声をなんとか聞き取ったA。なぜそんなことを聞くのか母は分からなかったが、幸男を探した。

A「ほら、あそこよ。」

母が指したところは観客席の最前列
幸男も自分達と同じように応援していた。
涼太「...これが幸にーちゃんの誕生日よりも大切なもの?」
A「そうだよ?幸男も浩志も試合に勝つために一生懸命にーー」

「バスケできないのに?」

涼太の冷ややかな言葉が刺さる。
涼太「幸にーちゃんなんでこれが大切なのかわからないっす。つまんないし、カッコ悪い。なんであんなことしてるの？」
折角兄の大切なものが見つかったというのに、涼太は幻滅していた。今の兄の姿はカッコ悪い。どうしてそんなことをしているのか理解できなかったのだ。そんな涼太に母は、

「そんなことないよ。」

母の顔は穏やかだった。
A「幸男もカッコいいよ。一緒に戦ってるんだよ。」
涼太「どこが？バスケしてないのに？」
A「違うよ。幸男も、私達も一緒にバスケをしているの。」
母の手が涼太の柔らかい髪をなでる。
A「バスケはチームで戦うんだ。チームというのは戦ってる選手だけじゃなくて、控えもマネージャーも監督も、応援している皆も一緒に戦うんだ。得点が入れば共に喜び、失点したら励まし合う。それが仲間だ。...これ、お父さんの口癖。」
そういたずらをしたように笑う母。

A「涼太には少し難しかったかしら？じゃあ、もし頑張っている涼太にお母さんが応援したらどう思う？嫌？」
涼太「嫌じゃないっス！りょーた嬉しくてすごーく頑張っちゃうっス！」
当然!と胸を張る涼太に母はクスクス笑って続ける。
A「じゃあ頑張っている涼太を応援しているお母さんはカッコ悪い？」
涼太「そんなことあるわけないっス！そんなこと言う奴がいたらりょーたが許さないっスよ！」

「そういうことだよ、涼太。」

母が微笑んだ瞬間、ブザービーターが鳴った。
試合は洛山中の勝利。チームも観客席にいた幸男も共に喜びを分かち合っていた。
そして涼太も、母の言葉をなんとなくだか理解したのだ。

試合後、涼太は兄に抱きつき言ったのだ。
涼太「浩にぃも幸にぃもカッコ良かったス！」
幸男「え？俺は試合に出てねーぞ？」
涼太「いーの！カッコ良かったんス！」

第13話：海常家族の夏休み＊→←第12話：誕生日よりも＊＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す