≪急募≫海常家族の母やりませんか？【家族パロ】

第８話：三男の帰り道＊＊ ページ24

翌日、由孝は眉間にシワをよせて、図書館に訪れた。
そんな彼を見て由美先生はくすくすと笑った。

由孝「せんせー、これ全然わかんなかった・・・」
由美「ｸｽｸｽ)やっぱり由孝くんには難しかったか。」
子ども扱いされたことに由孝はムカッとした。

由美「これね、私大好きなんだー。特に「梓弓」が好きなの。」
梓弓？先生の名前みたいだ、と由孝が思ってる間に、由美先生がきれいな声で朗読する。
今まで読んだ中で一番短いのに、古めかしい言葉たちに由孝はちんぷんかんぷんだ。

由美「これはね、夫を三年も待ち続けた女の人が別の男性と結婚しようとした時に夫が帰ってきたの。」
由孝「良かったじゃん。女の人はさぞ嬉しかっただろう。」
由孝の言葉に由美先生は首を横に降る。
由美「三年も待たせて、今更って夫を拒むの。
だから旦那さんも、新しい夫と仲良くねって歌を残して行っちゃうの。
女の人は「心はいつもあなたの傍にいたのに」って歌を歌っておいかけたのだけど、結局女の人の思いは届かず、死んでしまったわ。」
本をパタンと閉じて由美先生は「すごく綺麗なお話だわ。」とうっとりする。

「全然わかんない。」
由孝は不機嫌そうに言い返す。
由孝「二人が結ばれないのに、なんでそれがいい話なの?
そもそもその男自体が男失格だ!!三年も連絡しないとかあり得ない！再会してすぐ諦めるだって?俺だったら絶対しないね。
俺なら毎日手紙かいて、週１で家には帰って！もしそれでも他の男がいたって熱烈な言葉で奪い返してやるさ!!!絶対ーーー」

“由美先生を死なせたりしない”

ふとそんな言葉がでそうになる。
由孝は慌てて口を紡ぐ。
由美「ふふっ、由孝くんの彼女になる子は幸せになりそうだね。」
そう頭を撫でてくる手にもっと頬が熱くなる。

初めて会ったときからそうだ。

「いらっしゃい。」
読書感想文の本を探しになんとなく立ち入ったら彼女が鈴のなるような声で迎えてくれた。
「一昨年からここの司書をしている梓乃由美です。」
「武内由孝くんか。読書感想文ねぇ・・・由孝くんはどんな本が好きなの?」
そう親身になって話をしてくれる由美先生が綺麗で忘れられなかった。
それから毎日通うようになって、たくさんお話をしているのだ。

あのときから、俺は先生に恋してた。




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