別れる準備をしていても (in×ar)

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引き出しの中、小さなクリアケースに


壊れたビーズの某ネズミのストラップが入っている。


丸い球で出来たビーズのそれは、


形が解けてしまって


直そうかと伊野ちゃんに言われたけど、


このまま取っておきたいと断ったもので。









これは高校卒業の思い出と、


付き合って３年目の記念日に


某夢の国に行ったときにお揃いで買ったものだった。


それが壊れたのは、４年目、


大学１年生のときの大喧嘩だった。









『何でそう、俺にばっか言うの！？仕事なんだから、しょうがないでしょ！』








『っ、だからって、３ヶ月も前から一緒に旅行に行こうって言ったのに、伊野ちゃんがその日は絶対オフにするからって言ったよね…！

なのに山田と行ってこい、なんてどういうつもりだよ！俺は伊野ちゃんと行きたかったのに』








『うるさいよ、ぴーぴーぴーぴー、いいじゃんか、今日だって大ちゃんは山田と一緒に遊びに行ってたんだよね？

だったら浮気相手と仲良く行って来ればいい』








『浮気…って、それ、本当に言ってるの…？』








『疑わしいことしてるんじゃないの、って言ってんの。ま、俺には関係ないけど』









その頃はちょっとしたことでの喧嘩が


増えていた伊野ちゃんと俺だったけれど、


伊野ちゃんのその一言で俺の中の何かが、


決定的に壊れる瞬間があった。









そしたら、もう、どうでもよくなって、


涙が意識してないのに重力に従って落ちてきて、


足とか手とか、全然力入らないし、


さざ波みたいに心が冷えていって。









なのに不思議なことに笑みまで零れてきて、


言葉じゃ言い表せないんだけど、


多分あれは絶望、だったんじゃないかと思う。









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