別れる準備をしていても (in×ar)

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次に手に取ったのは、貝殻だった。


これは確か高校のときに修学旅行で伊野ちゃんが


沖縄に行ったとかで貰ったものだったかな。









『星の砂が採れるって聞いてたから、大ちゃんにあげようと思って期待してたのに…本当に取れたのはこれっぽっちで。ぜんっぜん地味で！鼻くそみたいで全然、全然だめだった…』








『星の砂を鼻くそなんて言うのは伊野ちゃんくらいだと思うよ。綺麗だと思うよ、星の砂』








『ぜんっぜん綺麗じゃないよ！もう酷いんだよ本当に！で、俺これすごい探して見つけたのに、店とかで売ってる星の砂なんてめちゃくちゃ安いんだよ！５００円しないんだよ！？』








『それは…酷いね。でも伊野ちゃんが俺のために頑張ってくれたことは、嬉しい』








『…！大ちゃん！』









自分より高い位置にある頭を撫でると、


見えないしっぽが


左右にぶんぶん揺れているのが見えた。









さっきの不貞腐れた表情とは打って変わって、


満面の笑みで『それでね』と続けた。









『その日早く寝ちゃったせいか、次の日の朝早くに目が覚めちゃって。ホテルの前が砂浜だったから、散歩でもしようかなーと思って行ったら、綺麗な貝殻がいっぱい落ちてたの』








『沖縄はすごいね…』








『それで、これ』









伊野ちゃんがこれ、と言って取り出したのは、


お店で売ってるみたいな、どこも欠けてない


光沢を放った綺麗な貝殻だった。








『わあ…これがその貝殻？本当に綺麗だね、買ったものみたい…』








『これは何の種類とか分からないんだけど、耳にあてたら海の音がしそうな貝殻で、形がそれっぽかったから持ってきた。こんなのがゴロゴロ落ちてたんだけど、その中でも綺麗なのを大ちゃんにあげようと思って』








『え？これ俺にくれるの？』








『あげる。流石にお菓子だけじゃロマンがないから。あと、これも』









片目を瞑ってキザったらしいことありゃしないのに、


伊野ちゃんときたら…かっこいい。









なんて───









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