別れる準備をしていても (in×ar)

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俺と大ちゃんの関係を、事務所は俺の出した


”大ちゃんと仕事のせいで別れることを催促されるならこの仕事はしない”


という条件のために渋々了承してくれている。


その反面で、


”ファンクラブの女の子には優しくすること”


という条件を出してきた。









もちろん、


俺もファンの子をないがしろにする性格ではない。


むしろ簡単な願いだと首を縦に振ったのだが、


ファンとストーカーは別だ。









毎日届くその桜の便箋の言葉は


日に日に黒くとぐろを巻く。









『伊野尾は男が好き(笑)』








『伊野尾の好きな人は高校時代よく遊んでた子』








『小さくてちょっとふわっとした黒髪の子、でしょ』








『ねぇ、まだ付き合ってるの』








『有岡大貴と』









名前がバレた瞬間、俺は焦った。









それだけじゃない、


有岡大貴の名前が書かれた手紙が届いた


２、３日前から俺の私物がなくなっているのだ。


代わりのきくものならまだいいが、


大ちゃんと一緒に買ったものを取られたときは


怒りのあまりロッカーを殴ってしまった。


そのせいで、


俺の楽屋のロッカーには大きなへこみがある。









更に俺を傷つけたのは、


その私物が無残な姿になって


封筒に入れられ戻ってくることだ。


ときには、女のものと思われる口紅や髪の毛、


血液が付着していたものもあった。









あまりの気持ち悪さに事務所に訴えたが、


社長は頑として、









「ファンクラブの子だろう、我慢しろ。警察に伊野尾のファンクラブの女が捕まった、なんてなったら評判が悪くなるからな」









と言って聞きもしない。


モテないおっさんには分かんないだろうな。









…女の人がどれほど怖いかってことなんて。









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