夏色花火

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花火大会当日。


その日は学校があったから、一回家に帰ってから待ち合わせすることになってる。


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「それにしても珍しいわね、Aが浴衣着たいなんて」


「もう〜お母さん！そんなこといいから早く早く。遅刻しちゃう！」


「はいはい。髪は自分でやってね〜」


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お母さんに着付けてもらった浴衣はちょっとくすんだ落ち着いた白地に朱色の花柄。深緑の帯が子供っぽくなくてとっても素敵。


去年の夏に、おばあちゃんから譲り受けたもの。


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普段は髪の毛もおろしっぱなし、体育の時はゆるく一つに結ぶ程度だけど、今日は浴衣だからアップにする。


「いってきまーす！」


慌ただしく、下駄の音をカランコロンさせながら

日が沈みそうな道を駆けて行った。


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「ちょ、え？！美香？」


"ごめーんA！遅れるから先に高嗣とかと回ってて！"


「んもう〜！」


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突然かかってきた美香からの電話。


遅れるって…一体何分遅れるのよ。


一人だけ浴衣で登場するなんて恥ずかしい…って思いながら待ち合わせ場所へ向かった。


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「…おう。」


見つけた。

Ｔシャツに柄物のズボン履いてる。

私服が取り立てみたいって聞いてたけど、納得の出で立ち。

‥でも似合ってる。

普段とは違う制服じゃない姿見れて、ラッキー。


「…あれ？千賀くんは？」

待ち合わせ場所にいたのは、二階堂くん一人で、千賀くんの姿は見当たらない。



「なんか遅れるって連絡あった。そっちは？」


「嘘…私も美香から遅れるって連絡あって…」


二人で顔を見合わせて、少ししてから呆れたように笑い合う。

ヤバイ、今すごくドキドキしてる。



美香は先に回っててなんて言ってたけど、二階堂くんは私と二人じゃさすがに嫌だよね…？


せっかく浴衣着たのにな…途方に暮れてしまう。


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