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ズンズン、と低く響くように漏れる重低音。
吸い込まれるように入っていく若者たち。
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クラブ、か。昔はよく行ってたっけ。
狭いコミュニティの中で同じEDMを共有してお酒飲んで。
ナンパされてそのままホテルなんてこともしばしばあったかな。
…そんなクラブ通いも彼と付き合ってからはやめたんだった。
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つい昨日振られた彼を思いながら涙を拭う。
今日はなんか、騒がしい中に紛れ込んで寂しさを紛らわしたい気分。
そう思った時にはもう、クラブの中へと吸い込まれていて。
久々に中へと足を踏み入れた。
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ドリンクチケットを貰ってカウンターでまずはテキーラを一杯。
バーテンさんは無愛想で無表情。
でもなんだかそれが心地よくて、不思議と安心する自分がいた。
テキーラをショットで飲み干したあと、次は何を飲もうか悩んでたら声をかけられる。
「何飲む?奢るよ。」
可愛らしい顔。
ドリンクカウンターを親指で差しながら片手はポケットの中。
クラブに相応しいチャラさだと妙に納得してしまう。
「じゃあ、テキーラ」
「マジ?」
ちょっと驚いた顔した彼は、すぐにニコッと笑顔になってお札渡してテキーラ二杯を両手で受け取った。
そのうち一杯を ん、と私に手渡してくれて、二人で乾杯。
やはりこれもショットで飲み干す。
彼を見たら同じくワンショ。
「お姉さんよく来るの?」
「んーん、久々に来た。お兄さんは?」
「俺も。奇遇だね」
空になったグラスをちょこっと上に上げてニコって笑う。
こういうよくある嘘も懐かしいなと感じさせられる。
毎週通ってる人ほど、クラブ久々って嘘ついて親近感沸かせてお持ち帰りするんだよな〜とか、思考回路が完全におばさん。
「俺VIPに席とってあんだけど、来ない?」
「…いいや。今日はお酒飲みに来ただけだし」
「そ?さっきから片足に体重のせるの繰り返してるから足疲れたのかな〜って思ったんだけど?」
…さすが、よく見てる。
ちょうど足が疲れてきたところだった。
なんか完全に見透かされてるのが面白くて、結局VIPに座らせてもらうことにした。
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作者名:コツメ | 作成日時:2019年6月10日 22時