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Break 8 ページ8

先輩は何も云わず、俺は何も言えなかった。

先輩が笑った。

それも、俺が今更気がついた事への
一種の嘲笑であろうか。


いや、幾ら先輩が「完璧」の舞台に
立っていないとは言え、そんな最低な人では無いはずだ。

俺は沈黙を打ち破って、もう一度言った。


中「先輩、何とも思わねぇのかよ。

周りに完璧だって思われて、
天才だって褒められて、嬉しいのかよ。

俺だったら、それは違うって言う。
先輩、先輩はどうして何も言わないんだ。」


先輩はそれを聴いて、表情に微笑を乗せたまま静かに言った。


「皆の評価を覆す権利を、俺は持ってない。

他人の気持ちを勝手に変えて、

俺が思い描いた俺という人間を理解させれば、
それは俺が認められる事にはならない。

皆が求めているのは「完璧」な俺で、
努力して完璧になった俺ではない。

だから俺の欠点に気付かない。
気持ちにも気が付かない。

責めるわけじゃない。
中也、お前も悪しからずそうだっただろう。」


何も言えなかった。

沈黙が苦しく、

胸を鋭利な刃物で貫かれたかの如く
心臓を一突きにされたかの如く痛む。


先輩はこの気持ちを、ずっとひとりで
抱えていたのだろうな。

この死にたくなるような胸の痛みを
ずっと抱えて生きてきたのだろうな。


今この時、いつもの様に酒に酔えれば
どれだけ楽だったろうか。


頭が働かなくなるまで、動けなくなるまで
酒を飲めば、少しは忘れられるだろうか。


けれど、先輩の事は俺が判っていてやらないと。

この人を、側で見ていてやらないと。

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百鬼レヴェル(プロフ) - 鏡夜さん» こちらこそありがとうございます^^沢山読んで頂けているんですね!嬉しいです!ご依頼とあらば受け付けますよ(小声) (2017年2月14日 6時) (レス) id: a171e3b181 (このIDを非表示/違反報告)
鏡夜(プロフ) - 百鬼レヴェルさん» そうなんですか!有難うございます´`** レヴェルさんの作品はどれも面白いし、関係性がすっごいタイプ…というかこの関係性が大好きです…!!r指定も読みたいです(ボソッ) (2017年2月13日 23時) (レス) id: 65bae456c3 (このIDを非表示/違反報告)
百鬼レヴェル(プロフ) - 鏡夜さん» コメントありがとうございます^^鏡夜さんの作品拝見させて頂いております!応援頂けて嬉しいです! (2017年2月13日 19時) (レス) id: a171e3b181 (このIDを非表示/違反報告)
鏡夜(プロフ) - こんにちは!はじめまして!凄く内容が濃くて面白いです…!勢いで全部読んじゃいました笑 完璧な先輩とか中也さんとか、本当に格好良いです… 応援してます!! (2017年2月7日 17時) (レス) id: 65bae456c3 (このIDを非表示/違反報告)
百鬼レヴェル(プロフ) - 吾亦紅@サキマキさん» そう言って頂けて嬉しいです!完璧な人間の裏の顔を必死に模索しながら書いています(笑) (2017年1月20日 6時) (レス) id: a171e3b181 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:百鬼レヴェル x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/28283/  
作成日時:2017年1月17日 19時

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