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Break 7 ページ7

一方で先輩はどうだったろうか。

一度だって、俺を邪険にした事はあったろうか。

先輩は俺を、「後輩」と呼んでくれる。


"助ける?そんなつもりは無いよ。
俺がしてるのは、先輩としての仕事だから。
,"


そう言ったあの時、矢張り先輩は
「後輩を助ける先輩」としての仕事を果たした。

であれば少なくとも、俺は大切にされていた。


敬意がないと指摘された時、
俺は否定などしなかった。

心の内で、ただの一瞬も
「そんな事は無い、俺は尊敬している」と
言い切れた事は無かった。


嗚呼、馬鹿だ。馬鹿すぎた。


なんて子供っぽい理屈だったろう。


俺は矢張り、先輩に遠く及ばず、隣に居れば霞むのだ。


完璧だと、誰が決めつけたのだろうか。


先輩は間違いなく、周りから不相応の評価を受けていたのだ。


理不尽に、不合理に。


そしてその不条理に気づいていながら
指摘せず、完璧と言われて礼を言った。


大人だった。まさしくそれが大人のあるべき姿だった。


尊敬すべき、「先輩」の姿だった。


脳裏に深く刻まれた「常識」の姿が
まるで化け物のように形を変えていく。


たった一つの理解で、
今、常識は非常識に塗り替えられた。

理屈は屁理屈へと姿を変えた。


俺はある事に気がつく。

今になって、気がついた。

それは遅すぎる理解であった。


壊れていたのは俺だった。

先輩の完璧を壊してやろうと思っていたけれど、
結果論で言えば、壊れたのは俺の理屈だった。


その理屈は、


先輩を邪険に扱う理由であり、

先輩を先輩として評価しない理由であり、

周りからの認識であり、

俺という人間の低俗さだった。


今となってはつくづく自分が哀れだ。


俺は謝るべきだ。先輩に。
隣で酒を煽るこの男に。

本当は酒になど酔ってはおらず、
貴方が今、完璧を形取るただの努力の結晶なのだと。


中「‥‥先輩、すまん。
俺、本当に馬鹿だった。

先輩、俺は全然気づかなかった。

今ここでその話を聞くまで、理解出来なかった。

ずっと先輩の事を「完璧人間」だと思ってた。


‥‥だから、すまん。」


今この胸の内に留まる感動を
表せる程の言葉を有してはいなかった。

どれほどの長文にしようが、
原稿用紙に文章を顕そうが、


この感動は過半数も伝えられないであろう。


余りにも稚拙だったが、矢張り、先輩が
ただならぬ努力の上形成された人なのだと
頭は理解している。


先輩はそれを聞いて「うん」と一言
感情のない微笑みを浮かべた。

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百鬼レヴェル(プロフ) - 鏡夜さん» こちらこそありがとうございます^^沢山読んで頂けているんですね!嬉しいです!ご依頼とあらば受け付けますよ(小声) (2017年2月14日 6時) (レス) id: a171e3b181 (このIDを非表示/違反報告)
鏡夜(プロフ) - 百鬼レヴェルさん» そうなんですか!有難うございます´`** レヴェルさんの作品はどれも面白いし、関係性がすっごいタイプ…というかこの関係性が大好きです…!!r指定も読みたいです(ボソッ) (2017年2月13日 23時) (レス) id: 65bae456c3 (このIDを非表示/違反報告)
百鬼レヴェル(プロフ) - 鏡夜さん» コメントありがとうございます^^鏡夜さんの作品拝見させて頂いております!応援頂けて嬉しいです! (2017年2月13日 19時) (レス) id: a171e3b181 (このIDを非表示/違反報告)
鏡夜(プロフ) - こんにちは!はじめまして!凄く内容が濃くて面白いです…!勢いで全部読んじゃいました笑 完璧な先輩とか中也さんとか、本当に格好良いです… 応援してます!! (2017年2月7日 17時) (レス) id: 65bae456c3 (このIDを非表示/違反報告)
百鬼レヴェル(プロフ) - 吾亦紅@サキマキさん» そう言って頂けて嬉しいです!完璧な人間の裏の顔を必死に模索しながら書いています(笑) (2017年1月20日 6時) (レス) id: a171e3b181 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:百鬼レヴェル x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/28283/  
作成日時:2017年1月17日 19時

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