【中原中也】完壁な先輩をぶっ壊す話【男主】

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薄暗い廊下を抜けた先、そこには
何故か人集りが出来ている。


否、何故かだなんて愚問だろう。


その輪の中心に居るのは、いつも通り先輩だった。


真っ黒な髪と紫色の瞳。


透き通るような白い肌を強調するような、
真っ黒な外套は、完全に彼の引き立て役だ。


部下「先輩、帰国子女って本当ですか？！」


「うん、まぁ。
マフィアを名乗っておきながらだけど。」


部下「へぇー！凄くかっこいい！」


帰国子女の人間なんて、今時沢山いるだろうに。

それに、このマフィアでは学歴など
大した自慢にはならない筈だった。


そんな常識を覆すのが、この男だけれど。


俺は厭そうにその輪の中に足を踏み入れ、
先輩の肩にポンと手を置いた。


中「先輩、オラ、行くぞ馬鹿。」


先輩は、中也、と嬉しそうに微笑むと、
周りを宥めながら俺の隣に並んだ。


「先輩って呼んでくれるのに、敬意は全く無いよね。」


それってどうなの、と冗談交じりに云う先輩に
俺は少し苛立ちを感じながらも息をするように無視をする。


「‥‥まぁた無視ですか。」


大体アンタは、あのぐらいの人集り
直ぐに突破できる癖に。

それでも彼らを相手取るのは、
ヒーロー気取りでいるからだろう。


アンタはヒーローなんかじゃない。


アンタはただの人間で、ただの先輩だから。


俺はそんな、「ただの先輩」を尊敬したい。


中「今日は部屋で書類整理だ。
昨日配られたやつあっただろ？アレを‥‥」


「ああ、それなら終わってるよ。
因みに提出もしておいた。」


中「‥‥は？」


あの量を？もう、終わらせた、だと？


中「ア、アンタ、昨晩は仕事に出て、寝てないんじゃないのかよ。」


「うん。寝てない。でもそれは仕事をしない理由にはならないでしょ？」


この人は変に頑張り屋で努力家だから困る。


だからこその人望の厚さなのだろうな。


それにしても、初めて知った。
先輩が、努力をしているから仕事が早いこと。


てっきり、なんでもパッパッと終わらせられる人なのかと思ってしまっていた。


間違い、だったんだな。


なんだよ、結構先輩にも普通なとこあるじゃねぇか。


この時からだったと思う。


先輩の、「完璧」の裏の「努力」を
見つけるようになったのは。


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