【中原中也】完壁な先輩をぶっ壊す話【男主】

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突然だが。


俺の先輩に、とんでもなくパーフェクトな人がいる。


喧嘩も抗争も負けた事は無いし、
他の奴が、右に出る隙を作らない。


頭は切れるし、知識も持ってる。


口が上手くて、その気になれば、
女はすぐ口説き落とせるし、


どんな奴でも、先輩の考えてる事は判らない。


艶のある黒髪はサラサラしてて、


瞳はまるで、花から色を絞り出して、
塗り込んだみたいに鮮やかなヴァイオレット。


此処からは好みの問題かもしれない。


贔屓目に見て、否、
それを抜いても先輩は白くて華奢で。


それでもしっかり筋肉は付いてるし、
身長はスラリと高くて何処ぞの俳優みたいだ。


性格は生憎凄く良い。


優しくて信頼されてて、上からも下からも
いつでも憧れの存在として認められている。


先輩が笑えば皆笑顔になるし、
先輩が頭を撫でれば、誰しもが頬を染める。


俺の先輩自慢はこの辺りにしておく。


俺は何方かと言えば、この先輩が嫌いだ。


先程皆に好かれている、といったが、
それは俺抜きという事で考えて欲しい。


大っぴらに公表すれば、先輩のファンのような
奴らから避難の声を浴びるのでやめておく。


此処で一つ、考えて見てほしい。


「完璧人間」とは、まさにこの人の事を指すのだろうが、

果たしてそんな人間は、存在するのか？


欠点が一つも無くて、容姿だけに留まらず
性格も頭の良さも誰にも負けないような、


そんな人間が、果たしてこの世に
どれだけいる事だろうか。


21世紀末までに100億人を突破するだろう、
だなんて言われているこの人口だが、


100億人というとんでもない人口の中で、
そんな飛び抜けて才を発する人間が何人いるだろうか。


俺はせいぜい、甘く見ても100人ぐらいだと思う。


そして、そんな人間が自分の隣を歩き、
自分に笑顔を振りまき、自分の先輩である人間が


果てさて、一体何人いるだろうか？



その幸運とも不運とも言える一人に、
俺はカウントされているのだろうか。



もしカウントされているのだとしたら、
それは由々しき問題だ。



この中原中也と云う人間が霞むほど、
周りの人間が霞むほど、あの人は凄い。



人は皆完璧を目指すが、本気でなれると思っているのは実は極少数で。


俺はその一人だ。


先輩、アンタは本当に、完璧人間なんですか？


俺の同僚に、「人間失格」はいるが、
だったらアンタは、「人間超越」かなんかですか？


アンタの「完璧(仮面)」、ぶっ壊してやるよ。

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