淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

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「A、ほっといてええで」

どうせまた1人でしょげとるやろ、と治が言う


「侑、怒っとるよなぁ」

「いや、アランくん悪ないやんアレ」


「でも侑のセットはミスなかったのに、俺がタイミングズレてもうたから…」



「あの状況でアランくんが体制まだ整えられてなかったことも

その前の角名とのトスが若干ズレたのも


セッター(ツム)がスパイカー(俺ら)のことちゃんと見えてないからやないですか」


「…でも、その期待(セット)に応えてこそのエースやろ」



「…アランくんはツムに甘すぎるて」


「治は侑に厳しすぎや」


「…稲荷崎(ここ)でそれが許されても、大学、プロっていったときツムの無茶が通用するとは限らんし


俺は、あいつの言いなりになるんは癪なんで」


イライラした口調で早口にまくし立てる治が


稲荷崎を出たあとも、侑が上手くやれるように

ちゃんとみんなとチームになれるように



本当は誰より侑を思ってるから怒っていることは
ここにいるみんなが分かってる


「そのための治やろ」

アランさんの言葉に、治は難しい顔をしたままで



「前も言うたけど、双子やからって一生一緒ってわけちゃうで

侑やっていつでまでも治に頼ってるわけにいかんやろうし」


北さんはピシャリと言い放ち



「そらそうやけど…」


アランさんは言葉を濁らせた



『あの、』


「どしたん？」


『侑が怒ってたのは、アランさんにじゃなくて…


うまくアランさんの、

みんなの力を引き出せなかった自分にだと思います』


「…！」



『誰よりアランさんのこと慕ってて、大好きだから

自分のトスでアランさんのすごさをみんなに見せつけられなかったことが悔しいんだと思います』


「…ふは、うん。せやなぁ」


アランさんは力が抜けたように笑って



「北の言う通り、ずっと同じチームで、とかずっと一緒におることなんて出来ないっちゅーことは分かってんねんけど…



アイツらはハッピーセットみたいなもんやから、
この先も一緒におって欲しいなあって思ってまうわ」

『…分かりますよ』


「Aも宮んず大好きやもんな」


アランさんと笑いあって




『私、侑探してきます』


1年生に荷物を頼んで会場内を歩く





『…見っけ』



「…かくれんぼしてるんとちゃうねんけど」


『そうだね、わかりやすいとこいるもんね』


「…」


『バス出るまで15分あるから』


「…は、」


『もう少しだけここにいようよ』

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