淡雪が溶ける頃3【HQ】/稲荷崎

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『なんでそんな風に思ったの？』

〈国見にいわれた

北川第一の試合、見に来てたのになんでAが顔を合わせなかったか分かるかって〉

『…』

〈…俺は、Aに嫌われるなんて思っても見なかったし、疎遠になんてなるわけねぇって思ってた…。


でも、じいちゃんの葬式のあとも
試合の時も

いつの間にか、帰り道も話すことが減っていって

俺、最後にAと話したのいつだったか思い出せなくなってた〉

『…うん』


〈姉ちゃんが、縁を途切らせないためにはどっちかが繋ぎとめなきゃいけないって言ってた


だから、ケータイもらってすぐAに連絡した〉

あの意味不明なメールにそんな意図があったことに少し驚いて


〈でもアイツらの言葉を聞いて思ったんだ

俺と話してる時、Aはいつも楽しそうな顔をしてなかったなって

…時々皆と同じ目をしてた〉

ポツリ、ポツリと飛雄が不器用に言葉を紡ぐ


〈なんで嫌われたのか、何がいけなかったのか分からなかった

考えたけど、わかんなくて

でもAに嫌われたままなのも、謝れないのも嫌だ。

だから俺に悪かったところがあるなら教えて欲しい〉


『…』


〈いつもそうだった
金田一や、国見も…

傷つけるつもりはないのにみんな俺から離れていく

より良くしたいって思ってるのに、上手くいかない

俺は、どうしたら良かったんだろうか〉


【天才(王様)は凡人の気持ちなんて分からない】

勝手にそう決めつけて

逃げ出した私は

1度でも

飛雄の気持ちを理解しようとしたことはあっただろうか

『…ごめんね』

〈え？〉

あの時言ってあげられなくてごめんね


『飛雄は悪くないよ』


あなたは、何も悪くない

『北一バレー部のことは、私にも全部は分からないし

言い方とか相手を思いやるとか…飛雄にも改善すべきことは確かにあったと思う』

電話越し、飛雄の息遣いが小さく聞こえる

『私はわざと飛雄のこと突き放して、避けてた』

〈…〉

『飛雄といると、飛雄みたいに真っ直ぐに頑張れない弱い自分が恥ずかしくて逃げたくなった

だから区別して遠ざけたつもりだった』

〈…俺といると苦しかったのか？〉

『うん』

〈…っ、〉

『でも、自分で突き放したくせに
飛雄と離れたらもっと苦しかった』


〈…？〉

『飛雄のこと嫌いになったことなんてないよ』

飛雄が息をのむのが分かった

『嫌いだったら試合なんて見に行かないし
こんなに気になったりしない』

〈…うん〉

『大好きだよ、飛雄』

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