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年始早々東京へ
春高本戦
試合の合間に、妹へのお土産を選びに売店に付き合って欲しいと頼まれて
会計を済ませている倫を待つ
倫曰く、双子を連れていくとうるさいし目立つ
銀は買い物の選びの当てにはならない
との事で1番都合のいい私が駆り出されることが多い
「A…?」
『!』
「お待たせ…って
誰かと話してた?」
『あ、うん。知り合いとたまたま会って…』
「知り合いって宮城の?」
『うん、まぁ』
「宮城の代表って__
白鳥沢だよね」
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春高3日目
『侑、ちゃんと水分とって』
「とってる!」
野生動物が獲物を捉えるような
貪欲でギラギラした瞳と
不敵にキュッと吊り上げられる口角
(楽しそうだなぁ)
って思う
特に治が出てきてからの侑のキレは
3セット目終盤だというのに加速しているようにすら思える
「宮んず、キレッキレやな」
「ほんっま恐ろしいなぁうちの1年は」
ベンチで見ていた3年生がコートを眺めながら呟いた
「ここへきてズレのない綺麗なトス、途切れることの無い集中力…」
観戦しているお客さんも
対戦相手も
仲間内でも
誰もが認める実力を持つ宮兄弟
「うわ!今の速攻決まるのかよ
あれ打ったスパイカーもすごいけど、あそこにあげるセッターがレベチだな」
「俺らとは最初っから出来が違うんだって
あーゆー奴らを天才って言うんだよ」
「だよなぁ、」
観覧席でのめり込むように見ていた他校の会話が耳に入る
2人が褒められるのは
侑が褒められるのは嬉しいけど
『……?』
ほんの少し、何かが引っかかる
デュースが続いて、30点に差し掛かる接戦
体力も、集中力も限界に近い
「ファーストタッチはセッターの宮侑!
双子の治がフォローに入ります!」
侑が助走に走った
治の指からボールが離れる
放たれたスパイクはブロックに弾かれ、コートに落ちた
相手チームの得点となり、試合が終わる
3年生は涙を流しながらその場に崩れ落ちて
宮兄弟は肩で息をしながら
侑がゆらゆらと立ち上がった
「おい」
「…ぁ?」
「なんで俺にあげんかったん」
治がトスを上げたのは、ほぼ同時に走り込んでいた3年の先輩
「ま、まあまあ侑!」
「銀は黙っとけ」
その先輩は、レギュラーではなくて
今年、春高では初めて交代メンバーとして出場した
時間はほんの数十分
「どう考えても俺に出すとこやったやろ
俺やったら決めれた!」
治が座ったまま侑を睨みあげた
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作者名:りな∞ | 作成日時:2023年11月6日 1時